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将来像見えず 住民不満 愛宕山造成 防衛局、3ヵ所で工事説明会

 山口県岩国市の愛宕山地区で国が近く始める米軍家族住宅と運動施設の敷地造成工事について、中国四国防衛局は地元3カ所での説明会を終えた。だが、参加住民の多くが知りたかったのは地区の具体的な将来像と暮らしの安心安全への影響だ。防衛局には、市や市民に対する事業の全体計画の丁寧な説明が求められる。

 工事説明会は4月下旬、牛野谷、平田東、愛宕の各供用会館で開かれ、延べ約190人が参加した。

 説明会に先立ち、住宅建設に反対する市民団体「愛宕山を守る市民連絡協議会」は、防衛局などに質問状を提出。米軍施設の建設スケジュールや配置図の提示、犯罪防止対策など28項目を問うた。

 牛野谷の説明会では、口頭で回答しようとした防衛局に対し、協議会側が文書での回答を要求。後日、防衛局は文書で回答した。

 米軍住宅の建設は、米海軍厚木基地(神奈川県)から米海兵隊岩国基地へ2017年ごろに予定される空母艦載機移転に伴う。地元での説明会は11年11月に市が実施して以降、開かれていなかった。

 既に施設の基本設計は終わり、現在は6月末までを予定する実施設計の途中段階。今回の説明会では、詳細な計画内容や運動施設の利用に関する質問も出たものの、防衛局の回答は「設計段階」などを理由に明確さを欠いた。米軍との調整が必要な事項も多いとみられるが、参加者からは不満が噴出した。

 参加者は実施設計が終わった段階で別途、計画全体についての説明会を開くよう要望。各会場にオブザーバーとして出席していた市も、造成工事の着手を促す一方で説明会の開催を防衛局に求めた。野球場など運動施設の仕様には、市の要望事項も含まれるからだ。

 あらためての説明会の開催要望に、防衛局は「市と調整し、適時適切に対応する」と述べるにとどまった。協議会の岡村寛世話人代表は「まちづくりがどんな計画で動いていくのかを知りたい。市民、県民に向いた行政を」と切望する。(野田華奈子)

愛宕山地区の米軍施設整備
 米軍家族住宅エリア(約28ヘクタール)と運動施設エリア(約16ヘクタール)からなる。家族住宅は270戸程度を計画。運動施設エリアには野球場や陸上競技場、アリーナを備えたコミュニティーセンターなどを配置する。中国四国防衛局によると、運動施設エリアは原則、身分証などのチェックなしに市民が利用できる形で整備するという。

(2014年5月9日朝刊掲載)

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