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被爆前後…知事の胸中 広島で高野氏の書簡公開

 原爆投下時の広島県知事だった高野源進氏(1895~1969年)が被爆前後に記した書簡4通を、広島市中区の広島県立文書館が公開している。今春、同館に収蔵され、関連資料とともに展示。軍都広島の空襲対策を急ぎ、被爆後は混乱を防ごうと奔走した行政トップの姿が浮かぶ。

 4通は、高野氏が県知事を務めた45年6~10月、前任地の上司だった元大阪府知事の池田清氏に宛てたもの。広島市にも「近々大空襲あることと覚悟」(6月20日)して「大々的に建物の疎開を実施中」(7月21日)とつづり、防空責任者としての危機感がにじむ。

 8月6日、高野氏は福山出張のため原爆を免れたものの、「惨虚の極」(9月7日)に直面。近く訪れるであろう国内の政治・経済の混迷への憂慮も記す。

 展示会場には、高野氏の名で被爆後に出された告諭のビラなども並ぶ。いまだ戦時下の8月7日の告諭は犠牲者を悼みつつ「戦列復帰」を求める内容で、原放送所(広島市安佐南区)からもラジオ放送された。終戦の同15日は国家再建へ、県民の結束を呼び掛けている。

 元県立文書館副館長の安藤福平さん(65)は「わずかな資料だが、被爆前後の広島の様子や知事の胸の内をも感じ取れる」と話す。

 展示は6月21日まで。同7日午前10時、安藤さんの講演会がある。無料。要予約。Tel082(245)8444。(林淳一郎)

(2014年5月10日朝刊掲載)

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