×

ニュース

2人を原爆症と認める 大阪地裁判決 国の却下処分覆す

 2008年に導入した原爆症認定基準で申請を却下された兵庫県の被爆者2人の遺族が、却下処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、大阪地裁は9日、2人を原爆症と認め、処分を取り消した。国に認定も義務付けた。処分決定まで時間がかかり、精神的苦痛を受けたとして国に求めていた損害賠償は棄却した。大阪、熊本地裁は今年3月、新旧両基準で認められなかった被爆者を原爆症と認めており、今回は3例目。

 西田隆裕裁判長は「2人の疾病は放射線が原因と認められ、認定申請時点で治療の必要性があった」と述べ、却下処分は違法と判断した。2人は提訴後の11年に死亡。国は昨年末、さらに新しい基準に見直したが、原告側によると、国は、その新基準に照らしても2人は原爆症と認められないと判断していた。

 判決を受け、広島訴訟の弁護団と原告は広島市中区の広島弁護士会館で記者会見した。原告団長の八木義彦さん(80)=安佐南区=は「亡くなった原告のことを思うと国の怠慢は腹が立ってしょうがない」と非難。佐々木猛也弁護団長は「国は被爆者援護法を早急に見直すべきだ」と強調した。

 厚生労働省には、被爆者や支援者約30人が訪れ、控訴断念と制度の抜本改正を求める声明を担当者に手渡した。提出後、記者会見した日本被団協の田中熙巳事務局長(82)は「高齢の被爆者が裁判を続けるのは酷だ。判決は内部被曝の影響も認めており、国は制度改正を急ぐべきだ」と訴えた。

(2014年5月10日朝刊掲載)

年別アーカイブ