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「口伝隊」 次代が担う 20~30代の新劇団 広島で16日初舞台

 広島に原爆が落とされた後、ニュースを口頭で伝えた少年たちを描いた故井上ひさしさんの朗読劇「少年口伝隊一九四五」の公演を続けてきた広島市民による実行委員会のメンバーが高齢化する中、20~30代を中心に新しい劇団「ふらっと」が今春、設立された。2年かけて引き継ぐ。まず16日、中区の旅館で催す修学旅行生向け公演が新劇団としての初舞台となる。

 実行委は2009年1月、被爆体験記の朗読ボランティア富永芳美さん(63)=中区=たちによって発足。アマチュア劇団や大学の演劇部などに声を掛け、主に修学旅行生に上演してきた。

 ただ11人の実行委は50~80代。若い後継者を求めていたところ、スタッフやキャストで参加していた団体職員伊勢村拓朗さん(23)が名乗りを上げ、「ふらっと」を4月に旗揚げした。メンバーは10人。富永さんたち指導者を除く8人は20~30代で、16日の初舞台では、朗読者と少年役を「ふらっと」の団員が演じる。

 中国新聞社の逸話を基にしたこの劇は、原爆で家族を亡くし「口伝隊」として街角で記事を読み上げる少年3人が、放射線による急性障害や枕崎台風に立ち向かうストーリー。実行委は今後週1回のペースで後継者に指導していく。富永さんは「若い人がヒロシマを継承してくれるのは心強い。2年後には共催で公演したい」と期待する。劇団代表の伊勢村さんは「戦争劇をやる劇団は今ではほとんどない。勉強させてもらって残していきたい」と話している。(二井理江)

(2014年5月12日朝刊掲載)

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