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社説・コラム

【解説】上関判断先送り 山口県知事 足りぬ説明責任

 中国電力による上関原発建設予定地の公有水面埋め立て免許の延長申請で、山口県の村岡嗣政知事が中電に6度目の補足説明を求めた判断には、2月の知事選で後ろ盾となった安倍政権が原発新増設に含みを持たせる中、その方針が示されるまで結論を棚上げしようとの配慮が透けて見える。

 昨年3月に可否判断の1年先送りを表明した故山本繁太郎前知事の辞任を受けた知事選で、元総務省官僚の村岡知事は自民、公明両党の推薦を得て圧勝。就任当日に早速、上京して安倍晋三首相と面会するなどした。その後は中電に求めた補足説明の回答が来ていない段階で、再び補足説明を求める可能性をにじませていた。

 4月に閣議決定された国のエネルギー基本計画には原発の新増設の方針は盛り込まれていない。行政手続きを慎重に進める姿勢を見せながら再び1年間、判断を先送りし、中電にボールを投げ返す対応は「時間稼ぎ」としか思えない。

 こうした中、過疎高齢化が進み、原発に頼らざるを得なかった上関町は、まちづくりの将来像を見通せないままだ。反対派のみならず、推進派からも村岡知事の姿勢に不満の声が出ている。知事はまだ、予定地周辺を視察していない。

 県民の安心安全を守る立場からも、せめて村岡知事は補足説明を再び求めざるを得なかった理由を中電任せにせず、自分の言葉で分かりやすく説明すべきだった。それが県トップとしてのあるべき姿ではないか。(門戸隆彦)

(2014年5月15日朝刊掲載)

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