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「上関」判断再び先送り 国の方針なく一部理解も 周辺首長 山口県内政党は賛否

 上関原発建設予定地の公有水面埋め立て免許の延長申請で、県が中国電力に6度目の補足説明を求めた14日、予定地の周辺市町長の一部は、政府が原発の新増設について方針を示さない中での判断に理解を示した。県内の主要政党の間には「妥当」「異常事態」と賛否が交錯した。

 周防大島町の椎木巧町長は「原発新増設について国の方針は示されておらず、知事の判断を尊重する」とし、判断を先送りした村岡嗣政知事を支持した。田布施町の長信正治町長も「現段階で知事に(許可不許可の)判断を求めること自体が酷」と擁護する姿勢を示した。

 柳井市の井原健太郎市長は出張先から「県が判断したことでコメントする立場にない」とのコメントを発表。光市の市川熙市長と平生町の山田健一町長も「コメントする立場にない」などとした。

 2011年6月に上関原発建設計画の凍結を求める意見書を全会一致で採択した光市議会。中村賢道議長は「県の決定にコメントできることはない」としながらも、凍結を訴える立場を維持する考えを強調した。

 2月の知事選で村岡知事を推薦した自民党県連の新谷和彦幹事長は「国の方針が出る前に可否を判断すれば全国の新増設の方向性を左右することになる」として知事の判断を「妥当」とした。同じく推薦した公明党県本部の先城憲尚幹事長も「政府の方針が出るのを待つしかない」と述べた。

 これに対し、民主党県連の平岡秀夫代表は「県民の不安と不信感を助長する」と再び補足説明を求めたことを批判。共産党県委員会の佐藤文明委員長は「これだけ長引くのは異常な事態」とし、判断を急ぐよう求めた。社民党県連合の佐々木明美代表は「上関町は中ぶらりんの状態が続き、県の責任は重大だ」と語気を強めた。

「判断の根拠整わず」 村岡知事一問一答

 村岡嗣政知事は14日、県庁で記者会見し、中国電力に6度目の補足説明を求めた理由を述べた。主な発言は次の通り。

 ―6度目の補足説明を求めた理由を教えてください。
 4月の回答は「エネルギー基本計画などを踏まえ、上関原発も当然に国の政策に位置付けられると認識している」との主張だ。一定の説明ではあるが、免許延長の可否を判断するための十分な材料がないと判断した。情報の収集や整理に時間がいると考え、回答期限は1年後とした。

 ―回答内容が不十分なら、不許可にする選択肢もあるのでは。
 許可をするかしないかは、公有水面埋立法に基づき、埋め立てに正当な理由があるかどうかで判断する。今は判断するための根拠が整っておらず、必要な補足説明をさらに求めた。適正な対処だ。

 ―根拠が整わなければ同じことが繰り返されるのですか。
 材料がそろわないのなら整える作業が必要だ。求めているのは、国のエネルギー政策で上関原発の位置付けが変わらないことの説明。どういう材料を持ってくるかは中電が考えるべきだ。

 ―中電とどんなやりとりをしているのか、県民には見えません。
 現段階で説明できる回答内容と県の問題意識は、これまで話してきた通り。今は意思形成過程にあり、おのずと出せる情報は限られる。最終的な判断をした後、差し支えないものは開示する。

 ―知事の政治的な判断は働いたのですか。
 東日本大震災を経験し、原発依存度はできるだけ低くする方が望ましい。だが延長申請はあくまで法の中の手続き。私の思いとかではなく、法に基づき対処しないといけない。

≪埋め立て免許をめぐる主な経緯≫※肩書は当時

2008年10月20日 原発計画に反対する上関町の祝島の漁業者たちが免許
            差し止め(後に免許取り消しに変更)を求めて山口地
            裁に提訴

     10月22日 二井関成知事が中国電力に免許を交付

  11年 3月15日 福島第1原発事故を受けて埋め立て工事が中断

  12年 6月25日 二井知事が免許延長を現状では認めない考えを表明

      7月29日 山本繁太郎知事が初当選し、上関原発計画について二
            井知事の方針を踏襲すると表明

     10月 5日 中電が免許延長を申請。山本知事は「不許可処分する
            ことになる」と明言

     10月23日 県が中電に延長申請の最初の補足説明を要求。13年
            1月30日まで計4回、繰り返す

  13年 3月 4日 山本知事が県議会代表質問で、可否判断を1年程度先
            送りすると表明

      3月19日 5度目の補足説明を中電に要求。回答期限を14年4
            月11日に設定

  14年 2月25日 村岡嗣政知事が就任し、山本知事の方針を踏襲すると
            表明

      4月14日 5度目の補足説明の回答文書が中電から県に届く

      5月14日 6度目の補足説明を中電に要求。回答期限を15年5
            月15日に設定

(2014年5月15日朝刊掲載)

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