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社説・コラム

天風録 「『2014年』の出来事」

 語呂合わせで歴史を暗記した人は多かろう。秀逸なフレーズは、今も思い出せる。昔の出来事なのに、やけに生々しく思えたものも。「行く意思(1914)あります? 第1次大戦」▲100年後のことしは、後の世にどう記憶されるのだろう。首相が集団的自衛権の行使容認へ考えを示した。戦後ずっと認められなかったが、時の政権の一存で変わる危うさ。「きな臭さ、においし(2014)解釈改憲」となりはしないか▲東シナ海で日本を脅かす大国の動きには「無礼よ(2014)隣国、領土守れ」と言いたくなる人もいよう。ただ同時に多くの国民は、歴史という時計の針が逆戻りしないか、心配を募らせる▲はっきりとしないことが多すぎる。軍事の役割を世界で果たす引き換えに、この国はどうなるのか。国民と国土を守る戦力が、どこまで手足を伸ばすのだろう。洋の東西を問わず、「不和、いよ(2014)いよ広がる」となったらどうする▲支持率の高い今こそ、と前のめり。だが、「つおいよ(2014)安倍政権、世論を味方に」とはいくまい。あの年が戦後日本の曲がり角だった―。後の世の教科書に、そう書き留められないようにしなくては。

(2014年5月16日朝刊掲載)

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