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米軍住宅工事で一時騒然 岩国の現場 反対団体が着工に抗議

 中国四国防衛局は15日、米軍再編に伴い米軍家族住宅と運動施設の建設が計画されている岩国市の愛宕山地域開発事業跡地で、敷地造成の仮設工事を始めた。米軍住宅化に反対する市民団体が一時、資材搬入口に立ちはだかり、騒然とする場面もあった。

 現場ではこの日、業者がトラックで、敷地を仮囲いするパネルの設置に向け、資材を搬入するなどした。作業が始まる午前8時ごろ、住宅建設に反対する「愛宕山を守る市民連絡協議会」のメンバー約20人が抗議の声を上げ、工事の中止を求めた。

 愛宕山地区の米軍施設整備は、2017年ごろとされる米軍厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機移転に伴う。270戸程度の米軍家族住宅エリア(28ヘクタール)と、市民と共同で利用する運動施設エリア(16ヘクタール)からなる。

 防衛局は4月下旬、地元3カ所で造成工事の説明会を開催。来年5月末までには造成工事を終え、建設工事に入る予定だ。(野田華奈子、大村隆)

「説明不足」根強い声 愛宕山造成 米軍施設隣接に不安

 岩国市の愛宕山地域開発事業跡地で15日、国が整備する米軍家族住宅と運動施設の敷地造成に向けた関連工事が動きだした。2017年ごろを予定する空母艦載機移転の準備が本格化し、地域と暮らしは大きく変貌する。だが一部住民には「説明不足」との不満も根強い。十分な情報を示す姿勢が国に求められる。(野田華奈子、大村隆、増田咲子)

 午前8時すぎ。住宅建設に反対する市民団体「愛宕山を守る市民連絡協議会」のメンバーたち約20人が、工事関係者に詰め寄った。「地元住民を無視したやり方だ」。岡村寛世話人代表は訴えた。

 協議会は、工事の前にまず全体的な計画の説明会があるべきだと主張してきた。実施設計が終わる6月末までは工事に着手しないよう中国四国防衛局に要望しており、この日、あらためて工事中止を申し入れた。

 愛宕山地域開発事業は県住宅供給公社が1998年に着工した。米海兵隊岩国基地の滑走路沖合移設への土砂提供と連動し、住宅団地を造る計画だったが、地価低迷などから多額の赤字を抱え、09年に廃止された。県や市などから買い取りの要望を受けた国が米軍住宅化の案を示し、12年に跡地約75ヘクタールを約169億円で購入した。

 基本設計などによると、米軍住宅エリアには家族住宅270戸程度を計画。運動施設エリアには、市の要請をくんだ野球場や陸上競技場などができる。市体育協会の伊達明彦会長は「市民も使える本格的な施設で期待は大きい」と歓迎する。

 地域発展への期待と、米軍施設に隣り合う不安。市は、空母艦載機の移転容認の判断について「国と継続している安全安心対策や地域振興策の協議の先にある」とする。

 市や協議会は現在、米軍家族住宅と運動施設の計画全体の説明会を防衛局に求めている。住み慣れた町がどう変わるのか。安全に暮らし続けられるのか。国は市民が抱く疑問への真摯(しんし)な対応を欠かしてはならない。

(2014年5月16日朝刊掲載)

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