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反対派「国の意向通り」 推進派「妥当」「道筋を」 「上関」判断再び先送り

 山口県上関町の中国電力上関原発建設予定地の公有水面埋め立て免許延長申請について、県が6度目の補足説明を中電に求めた14日、反対派は一様に怒りをあらわにした。昨年3月に続く可否判断の1年先延ばし。推進派は理解を示す一方、町の将来が描けない状況に不満の声も上げた。(井上龍太郎、門戸隆彦)

 地元の環境保護団体「上関の自然を守る会」の高島美登里代表(62)は13日、同町祝島の住民らと県庁を訪ね、免許を不許可にするよう申し入れたばかり。「翌日の先送り。ばかにしている」と声を荒らげた。

 反対派は3月、建設中止と埋め立て不許可を求める大規模集会を開催。村岡嗣政知事宛てに約10万人分の署名を提出した。実行委員会共同代表で児童文学作家の那須正幹さん(71)=防府市=は「知事は官僚出身。県民の安心安全ではなく、(原発に回帰する)国の意向に沿う形でしか判断できない」と憤る。

 4月に閣議決定された国のエネルギー基本計画に上関原発などの新増設は盛り込まれなかった。推進派の上関町議でつくる原電推進議員会の右田勝会長(72)は「現時点での国策を重んじており、妥当」と受け止める。柏原重海町長は「熟慮を重ねた上と認識している」とコメントした。

 町の高齢化率は5割を超す。人口は4月時点で3237人。先送りされたこの1年余りの間に117人減った。推進派の上関町まちづくり連絡協議会の古泉直紀事務局長(55)は「残念。申請を許可し、早期着工への道筋をつけてほしかった」とこぼす。

 広島大大学院社会科学研究科の横山信二教授(行政法)は、国の原子力政策自体が不透明だった前回の先送りを「違法とまでは言えない」としていた。今回「エネルギー基本計画が出てなお補足説明を求めるのは(判断すべきなのに判断しないという)不作為の違法に当たる。いったん不許可にして中電に再度、申請させるのが妥当な選択だ」と指摘する。

(2014年5月15日朝刊掲載)

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