天風録 「ヤンキー論」
14年5月19日
ひさしのようにした前髪。だぶだぶのズボン。「ヤンキー」がはやったのは1970年代から80年代だろうか。近ごろ見かけないと思いきや、表現の世界ではちょっとしたブームらしい▲福山市鞆町の鞆の津ミュージアムで、企画展「ヤンキー人類学」が開かれている。極彩色の改造バイクがあれば、成人式の派手な衣装がある。けばけばしくても悪趣味と切り捨てず、自己主張とパワーに焦点を当てる▲詩人相田みつをが、ヤンキー層に受けているとは意外だ。会場に彼の書「にんげんだもの」がある。「つまづいたっていいじゃないか」。なるほど、前向きで分かりやすい。そこが肝なのだろう▲精神科医の斎藤環(たまき)さんは、ヤンキー文化の特徴を挙げる。「悪趣味」な外づら、「気合主義」かたぎだという。「アゲアゲのノリがあれば何とかなる」というわけである。だが、これがあらぬ方向へと向かっては困る▲アベノミクスも、「アゲアゲ、ノリノリ」に支えられてはきたが、今は足踏み状態の感が否めない。経営者に気合を入れるだけでは、実感ある景気浮揚にはつながるまい。人手不足だって気になる。「つまづいたっていいじゃないか」と、言われると困る。
(2014年5月17日朝刊掲載)
(2014年5月17日朝刊掲載)