×

ニュース

村のあの日 住民の証言集め冊子へ 広島市安佐南区戸山

■記者 増田咲子

 65年前、原爆がさく裂した地点から北西に約20キロ。広島市安佐南区戸山地区(旧安佐郡戸山村)の民俗資料保存会(23人、中川博会長)が、住民の体験証言を集め始めた。直後に降った「黒い雨」は。学童疎開していた子どもたちは…。「今ならまだ残せる」。地域であの日何が起きたのかを100人の声で後世に伝える。

 沼田町史には、旧戸山村の罹災者(りさいしゃ)受け入れについて714人と記載されているが、救護活動などの詳しい記述はない。保存会の中川会長(60)は「証言集などもなく、65年がたって体験を聞ける人が少なくなる状況に危機感を持った」と、この時期の取り組みの背景を説明する。

 地区は黒い雨地域でもあり、皆実国民学校(現皆実小)の児童が疎開していた。「広島の方を見て『お母さん』と思わず声にした児童がいたと聞いた」「医薬品が不足して、逃げてきた被災者に十分な手当ができなかった」。そんな証言を集めて冊子にする。

 2日は、中川会長らメンバーが重病の被爆者を運んだ田丸俊基さん(80)から約1時間にわたって話を聞いた。

 保存会は聞き取りと、手記を寄せてもらう方法で来春までに100人分を集める。冊子には、顔写真や絵も交える。地域連携の一環で広島修道大(安佐南区)の学生も取り組みに加わる計画だ。

(2010年8月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ