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社説・コラム

共同世論調査 集団的自衛権容認反対48% 平和研・河上准教授に聞く 

「限定的行使」に国民警戒 慎重意見聞くべき

 共同通信社が17、18の両日に実施した全国電話世論調査で、安倍晋三首相が政府与党に検討を指示した集団的自衛権の行使容認について、反対は48・1%で、賛成39・0%を9・1ポイント上回った。広島市立大広島平和研究所の河上暁弘准教授(憲法学)に、受け止めや政府への注文を聞いた。(松本恭治)

 ―世論調査は15日の安倍首相の記者会見を受けて実施されましたが、反対論が依然多数を占めました。どうみますか。
 安倍首相は記者会見で、具体的な事例を描いたパネルまで用意し、行使容認を検討する必要性を熱心に説明した。「思ったほど賛成が伸びなかった」というのが本音だろう。あの会見は情緒的で、国民の反発を招いた面もあるのでは。首相は「限定的」に行使するというが、そんなことが本当に可能なのか。国民はそこら辺りを警戒しているのではないか。

 振り返ってみると、首相は当初、憲法全面改正を目指した。しかし憲法改正の発議要件を緩和する96条改正、憲法解釈の変更と、どんどんトーンダウンしている。これは世論調査の影響があったといえる。今回の結果も、安倍政権にボディーブローのように効いてくるはずだ。

 ―解釈変更による行使容認への反対は51・3%で、半数を超えました。これについては。
 集団的自衛権の行使容認は、平和国家・日本の在り方が百八十度変わる可能性のある問題だ。憲法改正の手続きは、慎重に国会で審議した後に国民投票に入る。しかし、解釈変更は内閣の判断一つであり、国民が手続きに関われない。その懸念が数字に表れている。

 ―安倍首相は、自ら設置した有識者懇談会から受け取った報告書を基に、安全保障政策の転換を提起しました。これに納得できるとした回答は35・6%、納得できない48・6%でした。今後、どのような議論が必要だと考えますか。
 有識者会議や審議会というものは、ある程度は反対論者も入れて議論をする。しかしながら今回のメンバーは賛成論者ばかり。そこで議論された結果について、国民の幅広い納得を得るのが難しいのは当然だろう。

 国民の多くは今、集団的自衛権の行使容認に納得していない。今後、議論を進める上で、安倍内閣は反対意見、慎重意見をよく聞くべきだ。今回の世論調査の結果は、それらの意見に耳を傾けるきっかけになると思う。

かわかみ・あきひろ
 中央大大学院法学研究科を経て、専修大大学院博士課程修了。広島市立大広島平和研究所講師などを経て4月から現職。著書に「平和と市民自治の憲法理論」など。富山市出身。41歳。

(2014年5月20日朝刊掲載)

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