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似島で慰霊の発掘 被爆者ら収容の臨時野戦病院跡 きせるなど遺品や遺骨 広島大院生の嘉陽さん

 広島大大学院医歯薬保健学研究科博士課程2年の嘉陽礼文さん(36)=広島市西区=が、原爆投下後に多くの被爆者が運び込まれ、埋葬された似島(南区)で、遺骨や遺品の発掘を進めている。「原爆犠牲者が生きた証しを捜し出し、慰霊したい」との思いから。当時使われていたとみられるきせるなどが出土している。(田中美千子、加納亜弥)

 現場は、負傷者を収容する臨時野戦病院となった旧陸軍施設跡。2004年に市が遺骨発掘調査をしたエリア西隣の国有地80平方メートルと私有地15平方メートルを掘り進める計画という。

 国と地権者の許可を得て2日に作業を開始。地下約70センチまで掘り下げると、陶製のボタンや1銭銅貨など約10点が出てきた。人間の骨とみられる指先大の骨片もあった。

 戦時中の日用品の可能性が高いのが、ほぼ完全な形で見つかった陶製のきせる。焼き物に詳しい愛知県瀬戸市の市立瀬戸蔵ミュージアムによると「日中戦争以降は金属資源が不足し、日用品の多くが陶磁器で代用された。同型のきせるは戦中、全国的に流通していた」という。嘉陽さんは「被爆者の遺品か、遺体を埋葬した軍関係者の持ち物では」とみている。

 嘉陽さんは沖縄県出身。大学院で解剖学を研究する傍ら、原爆ドーム(中区)そばの川で集めた被爆瓦を海外の大学や博物館に贈る活動を続けている。

 沖縄戦を生き抜いた祖父は弟とおい、祖母はいとこを亡くし、いずれも遺骨さえ見つかっていない。「似島でもまだ人知れず犠牲者が眠っているはず。供養し、遺族に手掛かりを提供したい」。6月末に作業を終え、見つけた品々を展示する機会を設けるつもりだ。

(2014年5月20日朝刊掲載)

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