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進出企業 影響を懸念 タイ戒厳令 中国地方 業務 大きな支障なし

 タイで戒厳令が布告された20日、同国に拠点を持つ中国地方の企業は情報収集に追われた。現時点で業務に大きな支障は出ていないが、多くの製造業が拠点を設けており、長引く政情不安による影響を懸念する声が広がった。(河野揚、山田英和、境信重)

 タイは東南アジア最大の地場企業の進出先。広島県によると、昨年6月時点で県内の55社が進出している。戒厳令を受けて、精米機など製造のサタケ(東広島市)は同日、日本からの渡航自粛を決めた。首都バンコクに事務所、その北部に工場があり、現地の従業員には夜間の外出を控えるよう指示した。「混乱が長期化して通関手続きや物流網などに悪影響が出なければいいが」と気をもむ。

 グループ最大の海外拠点がタイにある宇部興産(宇部市)も昨年11月から、全社員に治安状況への注意を求める通達を続ける。

 長引く政情不安でタイの景気は落ち込んでいる。合弁工場の生産が3月まで12カ月連続で前年割れしているマツダ。通常通り操業し「状況を注視する」。懸念は部品メーカーにも広がる。ナット製造の中国精螺(せいら)(東広島市)の現地法人の奥本仁志マネージングディレクターは「心配なのは工場の稼働。来月から生産調整になりそう」。不安そうに語った。

 広島銀行(広島市中区)はバンコク駐在員事務所の所長とスタッフの2人が通常通り出勤した。「現地の動向を注視しながら対応する」方針だ。ユニクロの出店を加速しているファーストリテイリング(山口市)は「リスクがあっても、企業の成長には重要な市場」と景気回復を期待した。

 タイ向けの旅行は伸び悩みが続く。JTB中国四国(広島市中区)は「利用者のマインドが冷え込まないか」と心配。アジアのほかの国の商品を充実させる。

 タイを軸に初の海外拠点設置を検討する島根県は、13~18日に職員が現地視察したばかり。産業振興課は「政情さえ安定すれば、有力な市場であることに変わりない。早く安定してほしい」と願う。

(2014年5月21日朝刊掲載)

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