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進む高齢化 不満と焦り 広島「上安・相田地区黒い雨の会」 存続ピンチ 

 「黒い雨」の援護対象区域拡大を求めて活動する広島市安佐南区の住民団体「上安・相田地区黒い雨の会」が、会存続の危機にさらされている。会員の高齢化が要因。国の巡回相談会は2年目に入ったが「健康不安の軽減」が目的で、住民たちが望む健康被害救済策とはほど遠い。過ぎゆく時間に、会員は不満と焦りを募らせている。

 同会は2002年に住民たち258人で結成した。旧安村でも、西側の長楽寺、高取地区は黒い雨の「大雨地域」。健康診断を無料で受けられ、被爆者健康手帳の取得につながる援護対象区域に指定されているが、東側の上安、相田地区は「小雨地域」で、対象から外れた。同会は「同じように黒い雨が降ったのに切り捨てられた」として、降雨状況の調査や健康被害の聞き取りを進め、国に援護対象区域拡大を訴えてきた。

 しかし10日にあった総会で、2代目会長の清木紀雄さん(73)が休会を提案した。「体力も気力も削られた」。出席者から存続を求める声が出たため、踏みとどまったが、2年前にがんを患った清木さんは体調不良を理由に会長を退いた。他の役員も高齢で後任が決められずにいる。会員も200人を切った。

 県や市などは10年、住民調査を基に、援護対象区域を約6倍に広げるよう国に要望。しかし、国は12年に「科学的合理的根拠がない」として拡大を見送る代わりに、相談事業を打ち出した。清木さんは「住民を黙らせるための時間稼ぎとしか思えない」と相談会に参加していない。

 県や市は相談会で住民の健康データを集め、援護区域拡大の要請に活用したい考え。ただ別の住民団体、県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会は「国がすぐ動くとも思えない」と、国を相手取った訴訟を検討している。(田中美千子)

(2014年5月23日朝刊掲載)

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