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社説・コラム

『記者縦横』 同世代の市民活動 注目

■東京支社・藤村潤平

 原爆・平和の分野に限らないが、市民活動の場には高齢者や学生が多く、同世代に出会う機会は少ない。働き盛りだったり子育て中だったりで、時間の自由度がないからだ。被爆者が年老い、記憶の継承が課題になる中、この問題に向き合う同世代の不在が気になっていた。

 17日に東京都内であったNPO法人ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会の総会。Tシャツにジャケット姿の若い男性が目を引いた。

 長崎市出身の被爆3世で、元高校生平和大使でもある岡山史興さん(29)=東京都世田谷区。会のホームページの作成・運営などを担当している。体験を伝えたい被爆者と継承に取り組む個人・団体を橋渡しするサイト「被爆体験継承ポータル」を発案し、昨年10月に開設した。

 岡山さんも就職後、仕事に忙殺され、何もできない時期があった。そんな中で「何かしなければと思い詰めるより、できることから行動しよう」と踏み出したのが、会への参加だった。

 高校、大学時代の仲間の多くも仕事や育児に追われる。「でも、今の時代だからできることがある」と岡山さん。松江市教委による漫画「はだしのゲン」の閲覧制限問題の際、ネットで広がった制限反対のオンライン署名を例に挙げる。

 継承ポータルへの登録は5団体。まだ道半ばだが、橋渡しは徐々に実現しているという。時代性と新たな試みが起こす「化学反応」に目を凝らしたい。

(2014年5月23日朝刊掲載)

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