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米軍低空飛行目撃が4年連続1000件超す 広島県内13年度1531件 岩国強化に住民ら警戒

 広島県内で米軍機とみられる低空飛行の目撃件数が2010年度以降、4年連続で千件を超えた。13年度は1531件で、前年度を196件下回ったものの、調査を始めた1997年度以降で3番目に多かった。米海兵隊岩国基地(岩国市)は、17年ごろまでに神奈川県から空母艦載機59機が移転し「極東最大級の基地」となる見通し。自治体や住民は警戒を強めている。(金刺大五)

 広島県のまとめでは、目撃情報があったのは県北、西部の9市町。北広島町が最も多く、1058件(前年度比318件増)と全体の約7割を占めた。安芸太田町265件(52件減)▽江田島市71件(111件減)▽廿日市市57件(307件減)▽三次市29件(7件増)▽大竹市19件(40件減)―などの順で続く。

 「抗議はしているが、改善がみられない。住民の不安を思うと、歯がゆい」。4割増となった北広島町の箕野博司町長は顔をしかめる。町は13年1月、4カ所に騒音測定器を設置。6月には、低空飛行の中止を求める抗議文を米軍などに送った。箕野町長は「粘り強く訴えていきたい」。

 県内では中国山地を横断する「ブラウンルート」や西中国山地の「エリア567」の訓練空域が設定されている。三次市作木町に住み、市から米軍機監視の情報連絡員を委嘱されている岡本和彦さん(61)は「いきなりごう音が響き、際どい飛行で墜落の危険を感じたこともある」と話す。

 廿日市市など5市町では目撃件数が減ったが、市民団体「岩国基地の拡張・強化に反対する県西部住民の会」の坂本千尋事務局長(61)=廿日市市=は「いくら通報しても改善されず、うんざりという声も聞く。飛行コースの多様化もみられ、実数は減っていない」と指摘。岩国基地の機能強化を見据え「警戒を強めないといけない」と強調する。

 ただ特定秘密保護法の年内施行を控え、不安もある。同法は防衛や外交の情報を担当大臣らが特定秘密を指定し、漏らした人を罰するが、秘密の対象はあいまいだからだ。三次市の岡本さんは「市への報告が処罰されるのか。それ以前に市は情報連絡員の委嘱をやめるのでは」。住民のチェック態勢が甘くなることを懸念する。

 県の集計では、日米合意で「必要不可欠なものに限る」とされている土日祝日の目撃件数は66件で、前年度比18減。一方、午後7時~翌朝の午前7時の夜間、早朝の時間帯は208件で48件増えた。目撃された実日数は205日だった。

(2014年5月24日朝刊掲載)

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