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社説・コラム

憲法 解釈変更を問う 「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会共同代表・星野恒雄さん

「戦争は嫌」 9条が体現

存在意義 世界に広める

 個別的自衛権だとか、集団的自衛権だというが、どちらも政治的なやりとりでつくり出された産物にすぎない。両方とも、憲法の規定では明文化されていない。それを解釈で存在するとかしないとか言っているだけだ。それよりも、憲法9条が根源的に何をうたっているのかという点を見つめるべきだ。

 憲法9条は「もう戦争は嫌だ」という日本国民の思いを体現したもの。軍国少年だった私も、当時の大人もそう思った。占領下で押し付けられた憲法だという主張があるが、それは当時の雰囲気を知らないか、忘れている人の言葉だ。

 「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会は昨年8月、発案者の主婦鷹巣直美さん(37)=神奈川県座間市=を中心に設立された。賞への推薦資格を持つ大学教授たち14個人・団体の推薦文と2万4887人分の署名をノルウェーの事務局に送り、ことしのノーベル平和賞の278候補の一つに登録された。

 憲法9条は、徹底した戦争の放棄を定めている。国として戦争ができないように、政府に歯止めをかける大事な役割を果たしている。しかし、海外の人には十分に認知されていない。ノーベル平和賞の授与を求める運動は、世界中の人に9条の存在を知ってもらうことが目的の一つだ。

 「戦争は嫌だ」というのは、世界共通の思い。武力行使と抽象的に言い換えても、結局は殺し殺されるという話に尽きる。安倍晋三首相は記者会見で「みなさんのお孫さんを守れなくてもいいのか」と訴えたが、胸を張って「必要なら戦争もしなければならない」と言うつもりなのか。安倍首相も「戦争は嫌ですよね」と問われれば、うなずくはずだ。

 ノーベル賞の候補になったというニュースが流れると、私たちが予想していなかった広がりがあった。全く見ず知らずの人が各地の駅前や街頭で運動を紹介するビラを配っているという。新聞にも賛同する投書がたくさん届いたと聞いた。荒唐無稽な運動だと言う人もいるが、大変勇気づけられた。

 ことしのノーベル平和賞は10月10日に発表される。実行委は、賞の候補になった後も署名を集め続けている。5月14日現在、計5万4137人分に上る。

 賞の審議が始まるのが9月と聞いているので、7月に署名をもう一度集約してノルウェーに送る。もし受賞しなくても、授与されるまで運動を続けたい。毎年候補になっていけば、それだけで価値があるし、世界的な知名度も上がっていくはずだ。

 最終的には、世界中の「戦争は嫌だ」と思う人たちと交流していきたい。そして、各国の憲法にも9条の精神を盛り込むような運動に広がっていけば、なおいい。武力を行使し合わなければ、戦争は起こらない。そこに9条が存在する意義がある。国民の命や暮らしを守るために必要なのは、決して集団的自衛権ではない。(聞き手は藤村潤平)

(2014年5月25日朝刊掲載)

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