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核廃絶 決意の時 広島 あす「原爆の日」

■記者 金崎由美

 人類を脅かし続ける2万3千発もの核兵器。世界が共有し始めた廃絶への道筋と決意―。老いた被爆者に、やるせなさと希望が交錯する。広島は6日、被爆65年を迎える。

 5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が5月、米ニューヨークで開かれた。「核兵器廃絶」を掲げた最終文書は、核兵器を「違法」とするための禁止条約に初めて言及した。NPTだけでは核軍縮のペースは遅く、包括的核実験禁止条約(CTBT)も発効の見通しが立たない中、廃絶の切り札として期待がかかる。

 底流には、核兵器をパワーゲームの道具としてではなく、非人道性の極致ととらえる被爆地と市民社会、一部の政府の問題意識がある。「核と人類は共存できない」という被爆者の長年の訴えは、ようやく世界に浸透し始めた。

 だが中東、南アジアをはじめ世界はなお、「核には核で」という負の連鎖からの出口を見いだせていない。

 平和記念式典に参列する潘基文(バンキムン)国連事務総長は先月、「核兵器の使用に対する唯一の防御は核兵器の廃絶だ」と断言した。式典には原爆を投下した米国をはじめ核保有国の英国、フランス代表も初めて参加する。すべての国が、ヒロシマに正面から向き合うべきだ。

 「核兵器廃絶へ世界の先頭に立つ」はずの日本はどうか。広島市の秋葉忠利市長は今年の平和宣言で「核の傘」からの離脱や非核三原則の法制化を政府に求める。

 全国の被爆者健康手帳の所持者は3月末時点で22万7565人、被爆者の平均年齢は76.73歳になった。例年、地元の慰霊碑を清掃してきたある被爆者の会は今年、特別に慰霊祭を催した。会場に供養塔を立て、白いコチョウランを飾った。「被爆70年はできないかもしれないから」

 「核兵器のない世界」を唱える49歳のオバマ米大統領はその実現を「私の生きているうちはないかもしれない」と語った。被爆者は「私らが生きているうちに」と願う。決断と実行の時が人類に迫る。

(2010年8月5日朝刊掲載)

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