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社説・コラム

天風録 「ウの目タカの目」

 東京都心を走る乗用車を遠く広島から見分けることができる? おととい打ち上げられた観測衛星「だいち2号」の能力を聞くと、耳を疑いたくなる。何しろ628キロかなたの宇宙から、大地の1~3メートルの物体が識別できるのだから▲世界最高水準のレーダーが載る。これで災害時の被害状況はもちろん、アマゾン流域の森林伐採やオホーツクの流氷の変化などが分かるらしい。地球の健康度を常にチェックする「かかりつけ医師衛星」というわけだ▲その打ち上げと同じ日に、やはり高精度のレーダーを載せた米軍の無人偵察機グローバルホークがグアムから日本へ飛来した。広げた翼は40メートル近く。何とも巨大な「地球タカ」である▲これから毎年の台風シーズンは青森・三沢基地に巣を構えるという。まるでウ飼いのように、離着陸は基地から、上空では遠く米国本土から遠隔操縦するそうだ。それこそウの目タカの目で、近隣を警戒するのだろう▲なるほど不穏な動きを見逃すことはあるまい。しかし、それだけで紛争の火種を平和裏に消せるわけでもない。だいち2号で気候変動や作物の栽培状況を調べ、凶作の兆しは各国へいち早く知らせる。そんな使い方がいい。

(2014年5月26日朝刊掲載)

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