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社説・コラム

【解説】16年サミット 広島誘致へ 松井市長 検討表明 オールヒロシマ結束を

 広島市で2016年のサミット開催が実現すれば、「核兵器のない世界」へ、世界のリーダーが新たな決意を被爆地から発信する絶好の機会となる。その歴史的な重みをしっかりと理解し、政財界、市民は結束して誘致に力を入れるべきだ。

 原爆の破滅的で非人道的な結末を自分の目で確かめるため、世界の政治指導者は広島、長崎に訪問を―。4月12日に市内であった、核兵器を持たない12カ国の「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」外相会合は「広島宣言」でこう呼び掛けた。

 核兵器による被害の実態を全身で受け止めるため、被爆地訪問の意味は大きい。ましてやサミット参加国のうち4カ国は、地球上の核兵器の約97%を保有している。残るは、米国と核同盟を組む北大西洋条約機構(NATO)の3カ国と、「核の傘」の提供を受ける日本だ。

 松井一実市長は名乗りを上げるかどうかを検討段階としたが、市幹部の一人は「立候補しない理由はない」。外務省の担当者も「被爆地というのはポイントの一つ。有力な候補地になりうる施設や交通手段も整っている」とみる。

 ただ、それだけではかなわない。市が00年のサミット誘致を目指した際も「国際的な知名度が高く、外務省の受けは良かった」(別の市幹部)。しかし結果は沖縄県に。沖縄振興に力を注ぐ「政治」の意思も働いただろうが、誘致活動の出遅れや、広島県と市の足並みの乱れを指摘する声もあった。

 今回こそ県、市、経済界を中心に、市民を巻き込んだ「オールヒロシマ」の取り組みが求められる。平和問題だけでなく、経済や環境など幅広いテーマを議論するサミットに、惨禍から復興した都市と市民の力をPRするのも重要だろう。その先に、米国のオバマ大統領の被爆地訪問はある。(岡田浩平)

(2014年5月27日朝刊掲載)

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