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社説・コラム

天風録 「日本維新『分党』」

 青いバラが誕生したのは、ちょうど10年前だ。バイオの力で他の植物から青の遺伝子を組み込んだ。自然界ではあり得ない取り合わせながら、やがて幻想的に映る。「不可能」の代名詞を返上し「夢かなう」の花言葉を得た▲こちらは「見果てぬ夢」になるのだろう。日本維新の会である。共同代表の二人が「分党」の方向で合意した。太陽の党が合流した1年半前、自民、民主に対抗する「第三極」として期待を集めたのに▲もっとも当初から政界では、あり得ない取り合わせと受け止められた。憲法や原発をめぐって基本政策が異なっていたからだ。それを棚上げにしたままの合流に、不自然さが漂っていたことを思い出す▲「多弱」ともやゆされる野党の新たな「極」づくりが佳境を迎えるや、大きくきしみ始めた。とりわけ、結いの党と合流するに当たって、憲法観の上で隔たりが大きく、折り合いが付かなかったようだ▲青いバラに驚いた10年前、民主党が赤いバラを多数咲かせて参院選で躍進した。政権交代の夢を引き寄せ、かなえたものの挫折した。寄り合い所帯のもろさは記憶に新しい。野党再編は加速するだろう。どんな夢の取り合わせになるだろうか。

(2014年5月30日朝刊掲載)

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