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原発避難に最長42時間「時間かかりすぎる」 島根30キロ圏試算 住民が不安視

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)で重大事故が起きた際の全住民の避難時間が最長42時間55分との島根、鳥取両県の試算を受け、原発30キロ圏の住民からは「時間がかかりすぎる」「車がない人はどうすればいいのか」との不安の声が上がった。また、原発5キロ圏から距離に応じて順番に逃げる段階的避難を標準的なケースとしたことに「現実的ではない」との批判の声が相次いだ。

 原発から14キロにある松江市の旅館を経営する新宮康治さん(70)は「そんなに時間がかかるのか」と語る。7キロのみずうみ保育園(同市)の舟木明美園長(54)は避難に18万8500台のマイカーを使う想定に驚きを隠さない。「保護者が迎えに来ない場合はバスで逃げるしかない。乳児が長い時間に耐えられるのかどうか不安」と漏らした。

 原発が立地する同市鹿島町の無職山田容子さん(67)も「1人暮らしで車もない。残されたらどうすればいいのか」と心配する。

 段階的避難について、原発を抱える同市の松浦正敬市長は「時間よりも、いかに安全を確認しながら避難するかが大事」とした。だが、20~30キロ圏にある出雲市や雲南市などの住民は、5キロ圏に避難指示が出てから20時間近く家で待機することになる。5歳と6カ月の子どもを抱える出雲市の主婦小松原京子さん(30)は「被曝(ひばく)の可能性があるのに待てない。すぐ逃げる」と語る。

 雲南市の速水雄一市長は「放射能は同心円状に広がらない。距離でなく風向きで優先避難場所を決めるなどパターンを増やさないと市民の理解は得られない」と計画の修正を求める。

 県東部は出雲大社(出雲市)など観光名所が多く、昨年の観光入り込み客数は2993万8千人を数える。同市の長岡秀人市長は「観光客の動向も踏まえた実効性のある計画を作る必要がある」とする。

 原発避難計画に詳しい民間団体「環境経済研究所」の上岡直見代表は「スクリーニングに伴う交通混乱やバス調達などが考慮されておらず現実的ではない」とし、「時間よりも避難による住民の最大被曝量の試算が必要だ」とした。

(2014年5月31日朝刊掲載)

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