×

社説・コラム

社説 維新の会「分党」へ 野党の責任は重大だが

 日本維新の会の「分党」は、当然の帰結といえよう。

 共同代表である橋下徹、石原慎太郎両氏の憲法観が、そもそも異なっていた。結いの党との合流協議を進める中で、決裂は避けられなかった。

 政党の根幹をなす政策すら定まらず、優先順位も違う。これまでも2人を支持するグループ間の対立が繰り返され、衆院選を前に議席確保を優先して合流したツケが回ってきた。

 分党で民主党やみんなの党を含め、野党再編が加速するとの見方が広がる。安倍政権が憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使容認を目指している今、野党には、いさめ役が求められていると肝に銘じてもらいたい。

 日本維新の会は2012年12月の衆院選で、民主党に迫る54議席を獲得した。自民、民主の当時の二大政党とは異なり、地方発で国政の改革をうたう「第三極」として国民の期待を集めた。石原、橋下両氏の二枚看板が注目を浴びた。

 だが、2人の党首は、党の基本理念や政策をすり合わせられなかった。政策の優先順位もずれていたといえよう。

 旧太陽の党を率いた石原氏は当初から「自主憲法制定」にこだわってきた。現行憲法を米国から押しつけられたとみる歴史観からだ。一方で、橋下氏は首相を公選制にするなど行政改革の面から憲法改正を求めているが、いまは大阪都構想の実現が最優先とみえる。

 原子力政策をめぐっても、脱原発への転換を求める橋下氏に対し、石原氏は推進派で、原発輸出に反対する党方針にも異議を唱えていた。いずれも、これまでに議論しておくべき重要な政策ではなかったか。

 民主党の挫折を思い出す。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題での鳩山政権の迷走や、消費税増税をめぐる党の分裂は、いずれも幹部の間でさえ優先させる政策が異なる状態で、政権が持たなかった。

 党内で、憲法観や安全保障、エネルギー政策など国の根幹を決めるような政策がぶれていては、早晩、立ち行かなくなるのは明らかであろう。

 分党を決定後、所属議員62人のうち、結いの党との合流を進める橋下氏に約30人、新党を目指す石原氏に約15人が同調している。15人程度は態度を決めておらず、第3のグループを求める声も出ている。民主党内でも結いの党との連携を模索する議員の動きが活発になってきた。

 ただ、数を集めることだけに熱心になっている場合ではない。安倍政権は集団的自衛権の行使容認をはじめ、国の行方を左右する安全保障政策を相次いで示し、与党公明党との協議を進めている。国会で自民党が圧倒する「1強多弱」を背景に、前のめりの姿勢が目立つ。

 国会審議が始まっているのに野党は存在感を示せていない。国民に問題点を明らかにするためにも、野党挙げて審議を深めていく責任があるのは言うまでもあるまい。

 石原氏のグループは、憲法改正に前向きなみんなの党と連携し、安倍政権への協力を模索し始めているという。

 野党には、政策を入念にチェックし、行き過ぎにはブレーキをかけていく役割があるはずだ。巨大与党ときちんと論じ合える結集を求めたい。

(2014年6月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ