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波紋 特定秘密保護法 透明度調査1位 鳥取の平井知事 「行政には隠す本能」 国民の監視が不可欠

 情報公開こそが民主主義の基本―。全国市民オンブズマン連絡会議の透明度調査で2010年度から3年連続1位を獲得した鳥取県の平井伸治知事(52)は、特定秘密保護法の下で「特定秘密」の拡大解釈を危惧し、「国民の不断の監視が欠かせない」と訴える。

 「情報公開度ナンバーワンを『品質保証』している県」と胸を張る平井知事には、苦い経験がある。旧自治省からの出向で総務部長や副知事を務めた県庁へ、知事に初当選し2年ぶりに戻った07年4月。情報公開条例に基づき開示を推進していたはずの県が、不在の間に、公開文書の黒塗りを急増させていた。

 「個人や企業の情報を口実に、ちょっとしたことで非開示部分を増やしていた」。平井知事は原則公開の徹底を指示し、職員の意識を変えてきた。そして、官僚だった自らの経験も踏まえ「行政官庁は得てして、一つの突破口でどんどん秘密の指定を広げる可能性がある。反射的に(情報を)隠したい本能がある」と国に目を向ける。

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の30キロ圏に米子、境港両市が入り、北朝鮮に拉致された米子市の松本京子さん=失踪当時(29)=家族を支援する県。テロや外交に関わるとして国からの情報提供が縮小すれば、県としての対策の根源が崩れかねないと危ぶむ。

 反対意見がある中で成立が推し進められた特定秘密保護法。政府に対して平井知事は「民主主義の哲学について、基本的な理解が欠けているのではないか」との思いを抱く。旧自治省時代などに渡米し、住民が積極的に行政施策へ関与する姿に接した。「自治体は主の住民が最終判断できる条件を整えるのが当たり前」で、「民主主義の前提は情報公開」と断言する。

 だからこそ、特定秘密保護法の運用をめぐっては、官僚たちではない第三者がチェックする重要性を強調する。県政運営への影響について、こう言い切る。「自治体は透明な組織であるべきで、情報公開の手を緩める考えはない」(川崎崇史)

平井伸治(ひらい・しんじ)氏
 84年に旧自治省入省。同省大臣官房総務課課長補佐などとして渡米。99年から鳥取県総務部長、副知事を歴任。07年に鳥取県知事に初当選し現在2期目。12年から中国地方知事会会長。東京都出身。東京大卒。

(2014年6月2日朝刊掲載)

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