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被爆樹木の水彩画集 広島市安芸区の藤登さん出版

 広島市安芸区のアマチュア画家、藤登弘郎さん(78)が水彩画集「あの日から70年―生き続ける被爆樹木」を自費出版した。「原爆の悲惨さと、生命力の強さを感じ取ってほしい」と、惨禍を生き抜いた木々を初めて描いた。

 B5判カラー、104ページ。32種80本を繊細な筆遣いで描き、所在地や樹高、被爆時の状況などの説明も添えた。天満小(西区)のプラタナスには、熱線に焼かれたためできたという穴が、幹にぽっかりと開いている。平和記念公園(中区)のアオギリは、幹の表面を上下に走る傷を微細に描いた。木の皮目や質感の表現にこだわったという。

 昨年1月から1年かけて、爆心地から半径約2キロ以内の被爆樹木約170本が植わる全55カ所(当時)でスケッチ。所有者から木にまつわるエピソードも聞いて完成させた。「もっと被爆樹木に関心を持ってもらえれば」と話している。約100万円をかけて450部印刷。一般には配らず、市内の小中学校や図書館に寄贈する。(西村萌)

被爆樹木
 広島市が1996年度から登録を始めた。45年8月6日の原爆投下の前からあり、爆心地から半径約2キロ以内で被爆した樹木が対象。市民が立ち入りできない個人宅を除く。現在は公園や寺など56カ所にイチョウ、エノキなど約30種類約170本ある。市は、被爆時の状況などを記した説明板を取り付けているほか、根腐れを防いだり害虫を駆除したりと「治療」も実施。枯れてしまった木もあるが、個人宅から小学校に移植され、新たに登録された例もある。

(2014年6月2日朝刊掲載)

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