×

社説・コラム

社説 特定秘密と国会 チェック機能 果たせぬ

 特定秘密保護法が成立して約半年。運用をチェックする国会の監視機関をめぐる議論が本格化している。自民、公明両党は先週、「情報監視審査会」を衆参両院内に常設する国会法改正案を衆院に提出した。

 審査会は政府から秘密保護法の運用状況について報告を受け、特定秘密の提出を求めることができる、としている。安全保障などを盾に政府に拒まれれば、それまでである。

 この中身で、国会がどれだけチェック機能を果たせるのだろうか。はなはだ心もとないと言わざるを得ない。

 法案によると、衆参両院の審査会は、それぞれ議員8人で構成し、非公開で開かれる。秘密にすべきではないと審査会が判断した場合には、指定の解除などを政府に勧告できるものの、強制力はない。

 その理由について、与党側は「もし強制力を持たせれば、国会の過度の介入につながり、三権分立が崩れる」と主張する。

 だが国会こそが国権の最高機関であるはずだ。これまで以上に政府が情報を独占する体制になれば、そちらの方がよほど、三権分立を揺るがしかねない。

 さらに与党案で疑問なのは、そもそも審査会は問題がありそうな特定秘密を把握できるのかどうかということだ。

 例えば、安倍政権は憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を容認しようとしている。自衛隊を含め、安全保障に関わる情報については、当然、特定秘密に指定されるだろう。秘密指定の是非を審査会でチェックしようとしても、政府が情報を提供しなければ、不可能である。

 もともと国会の監視機関は、昨年の秘密保護法の審議過程で、与党が国民の理解を得ようと唐突に打ち出した経緯がある。このままでは形ばかりと批判されても仕方あるまい。

 審査会が政府以外から情報を得る手段として、公務員からの内部告発が考えられる。特定秘密をめぐっても、告発者を保護する必要があろう。それなのに与党は今回の改正案では付則に検討課題として盛り込むだけにとどめるという。

 与党側は改正案を今国会中に成立させたい考えだ。民主党は与党の法案について「チェック機能が不十分」とし、国会の権限を強める別の改正案を提出している。会期末にこだわらず、しっかり議論すべきだ。

 国会の審査会は、秘密保護法の運用を監視するため設置される4機関の一つである。審査会だけではなく、ほかの機関もチェック機能に疑問符が付く。

 例えば、外部の有識者でつくる情報保全諮問会議である。政府が1月に設置した。初回以来、半年間も会議は開かれていないという。特定秘密の指定、解除の運用基準について助言を受けることになっているが、政府が密室で基準作りを進めている印象は否めない。

 残る二つの監視機関は、全く姿が見えてこない。内閣官房に設ける保全監視委員会と、内閣府に置く情報保全監察室である。官僚中心とみられるが、メンバー、権限とも分からない。

 こんな状態で、予定通り12月までに秘密保護法を施行しようというのだろうか。政府が特定秘密を恣意(しい)的に運用しかねないという国民の不安を拭い去ることは、とてもできまい。

(2014年6月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ