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震度6で倒壊恐れ 被爆建物旧理学部1号館 広島市調査 改修20億~40億円

被爆建物旧理学部1号館

 広島市中区東千田町の広島大本部跡地に残る被爆建物の旧理学部1号館について、市の耐震診断で、大規模地震で倒壊する危険性が高いとの結果が出たことが2日、分かった。一部保存するだけでも20億円近くかかるとみられる。市は結果を踏まえ、保存・活用策の検討を進める。(加納亜弥、川手寿志)

 市が委託した建設設計業者の調査では、一般的に震度6~7程度の規模での建物の耐震性能を表す指標で、1階の数値が低く、地震で「倒壊や崩壊する危険性が高い」との診断結果が出た。E字形をした建物の全部保存と一部保存の計4パターンで出した改修費は約20億~40億円程度と試算されたという。

 1号館は、鉄筋3階建て延べ約8500平方メートル。1931年に、広島大の前身校の一つ広島文理科大の校舎として建った。爆心地の南南東約1・4キロにあり、原爆で外観を残して全焼。戦後は修復し、広島大理学部校舎として使われた。東広島市への大学の統合移転に伴い、91年に閉鎖された。

 内部、外部ともに傷みが激しく、広島市は昨年12月、コンクリート製の12カ所の壁から円柱状の試料を抜き取るなど劣化状況を調べていた。今後、他都市の古い建物の現地調査などもして、保存・活用の在り方を詰める。

 広島大本部跡地内では国立大学財務・経営センター(千葉市)が所有していた1号館に隣接する事業用地で超高層マンションや、学生向けの賃貸住宅などを建てる民間企業グループの再開発計画を広島市と広島大が採用、昨年12月に発表。ことし1月にセンターから民間へ土地が売却された。一方、1号館も当初は民間での利活用を目指したが、用途が限られることなどがネックとなり、市が2013年4月にセンターから土地と建物の無償譲渡を受けた。

(2014年6月3日朝刊掲載)

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