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届けヒロシマの声 式典出席の3人にメッセージ

 広島市の平和記念式典に6日、国連の潘基文(バンキムン)事務総長と、原爆を投下した米国のジョン・ルース駐日大使、民主党政権になった被爆国の菅直人首相の3人が参列する。被爆地で何を感じ、その思いをどう生かしてほしいか―。5日、市内で届けたいヒロシマのメッセージを集めた。


潘基文国連総長へ 各国トップに説得を

 在日本大韓民国民団(民団)広島県地方本部の権五源(クォンオウォン)団長(68)=広島市安芸区
 「参列は画期的。国際的に大きなインパクトを与える。被爆して亡くなった同胞も喜ぶだろう。国境を越え、核兵器のない世界の実現に率先して取り組む姿は韓民族の誇りだ。世界平和のため、さらに頑張ってほしい。私たちも努力を続ける」

 被爆死した姉の慰霊に平和記念公園(中区)を訪れていた塚本修二さん(74)=中区
 「核兵器廃絶の主張も、行動が伴わないと意味がなくなる。リーダーシップを発揮し、すべての核保有国の代表者を広島に集めてほしい。核の恐ろしさを知らなければ、廃絶にはつながらない」

 派遣社員高穂幸子さん(41)=西区
 「式典で平和を願う人の多さを実感してほしい。被爆者の声も聞いてほしい。そして、各国のトップに話し合いのテーブルに着くよう説得してください」

 市立広島商業高との交流に訪れた長崎市立長崎商業高3年の前浜すみれさん(17)
 「国連のトップが核兵器廃絶に熱心で、非常に心強い。1国だけでは難しくても、国連を中心に世界が結束すれば、実現できるはずだ。平和の大切さを発信し続けてほしい」


ジョン・ルース米大使へ 犠牲者 心から悼んで

 広島県被団協の坪井直理事長(85)=広島市西区
 「勇気ある参列を歓迎する。謝罪してほしいとは言わない。ただ犠牲者を心から悼んでほしい。核兵器廃絶を目指す市民の熱意を体感し、大統領に伝えてほしい。人類の存続がかかっている。世界が一つになる時だ」

 もう一つの県被団協の金子一士理事長(84)=安芸区
 「原爆は65年にわたり、被爆者を苦しめ続けている。参列には敬意を表するが、来るからにはヒロシマの声に耳を傾け、母国に被害の実相を知らしめてほしい。原爆投下を正当化しているようでは核兵器廃絶の日は遠い」

 平和記念公園で核兵器廃絶に向けた署名を集めていた広島女学院高2年、丸住貴子さん(16)=中区
 「参列は核兵器廃絶への前進。広島で被爆者の話に耳を傾け、次は具体的な取り組みを進めてほしい。私たちも何ができるか必死に考え、動いている」

 日本人高校生との署名活動に加わったハワイ・プナホウ学園の高校3年、エリザベス・ウシゴメさん(17)
 「日系人の私の祖母は、広島の原爆に遭った。核兵器はなくすべきだし、そのためにすべての人が行動するべきだ。大使も同じように感じてほしい」


菅直人首相へ 65年の苦悩背負って

 主婦梅本郁美さん(64)=広島市中区
 「被爆者の高齢化が進んでいる。私を妊娠中に被爆した母も、2年前にがんで亡くなった。政治的な決断で、苦しい思いをしている人たちの原爆症認定を一気に進めてほしい」

 ヒロシマピースボランティアの伊藤正雄さん(69)=佐伯区
 「首相の姿勢には不信感を感じている。核拡散防止条約(NPT)に加盟していないインドと、原子力協定の交渉を始めたことが大きい。過ちを二度と繰り返さないというヒロシマの思いをいま一度、しっかりとかみしめてほしい」

 鶴幸千代さん(82)=広島県海田町
 「現在の西区楠木町で被爆し、妹を亡くした。被爆国の首相は、被爆者の65年分の苦しみを背負っていると自覚してほしい。口先だけではいけない。核兵器がなくならないと平和は実現しないというメッセージを、世界に力強く発信するべきだ」

 市立広島商業高3年の笠岡実咲さん(18)=安佐南区
 「広島、長崎の原爆の日だけで終わらせず、一年を通じて平和への取り組みを進めてほしい。『核兵器なき世界』が実現するように被爆国の首相として、国をあげてサポートしてほしい」

(2010年8月6日朝刊掲載)

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