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原爆文学「記憶遺産に」 広島文学資料保全の会 峠三吉ら直筆 登録目指す

 広島文学資料保全の会(土屋時子代表)は5日、詩人峠三吉(1917~53年)ら被爆作家3人の直筆文書3点について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産への登録に向けた活動を始めた。被爆の惨劇を刻む文学資料を確実に次世代へ継承していくのが狙い。2016年の申請、17年登録を目指す。

 3点は、峠三吉「原爆詩集」の最終草稿▽原爆詩人栗原貞子(1913~05年)の代表作「生ましめんかな」が記された創作ノート▽作家原民喜(1905~51年)が小説「夏の花」の下敷きにした原爆被災時の手帳―。順に同会、広島女学院大、遺族がそれぞれ保管している。

 原民喜の手帳には、被爆当日の惨状とともに「我ハ奇蹟的ニ無傷ナリシモ、コハ今後生キノビテコノ有様ヲツタへヨト天ノ命ナランカ」と、文学者としての使命感がつづられている。

 登録を目指す背景には、同会メンバーや遺族が高齢となり、資料の保管が難しくなっている現状がある。また、文学館のような公的施設を造る機運が高まればとの期待もあるという。

 この日、市役所で会見した土屋代表は「被爆作家の記録は、広島の財産。強い思いで取り組みたい」と話した。(石井雄一)

記憶遺産
 世界的に貴重な直筆文書、書籍や映画を保護するため、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が1992年創設。2年ごとに国や自治体、非政府組織(NGO)の推薦を受け審査、登録する。1月時点で301件。「アンネの日記」や「ゲーテの直筆文学作品」があり、国内では「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」など3件。

(2014年6月6日朝刊掲載)

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