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社説・コラム

社説 G7サミット閉幕 実効性こそが試される

 ベルギーで開かれていた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が閉幕した。

 昨年までと違うのはウクライナ問題をめぐってロシアを排除したことだ。現時点においては「G8」の枠組みは崩壊したとみなさざるを得まい。そこに何より不安が残る。

 むろん成果を残したのは間違いない。外交の議論では大半の時間をウクライナに費やしたようだ。首脳宣言においても、ウクライナ新政権の支援とロシアへの非難をあらためて明確にし、追加の経済制裁にも言及して警告した。

 さらには中国に対するけん制を打ち出した意味も重い。東シナ海と南シナ海の緊張について「全ての当事者」に対し、国際法に従うよう求めた。名指しこそ避けたものの、言わんとすることは明らかであろう。

 首脳宣言には、ほかにも世界が抱える深刻な課題が列挙されている。北朝鮮の核・ミサイルや拉致問題に言及して対応を求めたほか、ナイジェリアのイスラム過激派ボコ・ハラムによる女子生徒拉致を厳しく非難した。さらにアサド氏が再選されたシリア大統領選を「まやかし」と言い切り、揺らぐ中東和平も交渉解決をうたった。

 妥当な中身といえよう。だが気掛かりなのは言いっ放しに終わらないか、ということだ。もとよりロシアや中国をはじめこうした問題に影響力を持つ国はほかにも多い。G7から呼び掛けたというだけで、どれほどの実効性があるのか。

 現に、中国外務省はG7首脳宣言について「争いに無関係の国が干渉したり介入したりするのは問題の解決にならない」と述べ反発を強めている。

 経済分野の首脳宣言を見れば懸念はよりはっきりする。世界経済について下振れリスクを指摘した上で、市場開放などの必要性を強調した。

 だが経済のグローバル化が一段と進む中で、新興国を抜きにしては語れない。宣言においては、具体的な世界経済の成長戦略は11月の20カ国・地域(G20)サミットで提示するとした。つまるところ、G7だけの枠組みでいくら同意してもさほどの意味がないことを露呈したともいえるだろう。

 例えば地球温暖化防止など世界規模の宿題はほかにもある。主張の近い7カ国の「仲良しクラブ」の限界は明らかだ。現に中国やインドがG8に立場の違いを超えて、オブザーバー参加したことがあったはずだ。

 ロシアに関していえば、ウクライナ問題の解決に向けて国際社会の意に沿う行動が求められるのは言うまでもない。一方で排除したままサミットの枠組みが長期的に続くことはやはり望ましくない。

 来年はドイツで開かれる。プーチン大統領とのパイプを持つメルケル首相が、サミットの枠組みをどう再構築していくのかが問われてこよう。

 日本としても当然、対応を迫られる。2016年はホスト国となるからだ。

 広島市は広島県とともにサミットの誘致に向けて検討を始めた。この際、ロシアや中国を含む核保有国のリーダーが被爆地にそろい「平和・核軍縮特別サミット」としてはどうだろう。日本政府はそこまで視野に入れて準備をしてもらいたい。

(2014年6月6日朝刊掲載)

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