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潮流発電 備後の技結集 事業化へ中小経営者タッグ 17日に組合設立 瀬戸内で実証試験へ

 ものづくりが盛んな備後地方の中小企業の経営者たちが、太陽光や風力と比べ開発が遅れている潮流発電の事業化を進めている。小型人工衛星「まいど1号」の開発に携わった大阪府東大阪市の町工場にならい、各社の技術を結集。発電装置を大量生産するとともに、瀬戸内海で発電事業を始める計画だ。経営者たちは備後発「せとうち1号」を成功させると息巻いている。(永井友浩)

 金属加工などに携わる福山市内の製造業4社の社長が発起人になり、17日に福山潮流発電協同組合を立ち上げる。同市鞆町の仙酔島近くで実証試験をするほか、周辺の漁協などに協力を依頼して海中に発電装置を設置し、本格的に発電事業に乗り出す。

 マグロをイメージした円すいに似た形の本体にプロペラ3枚を取り付けて潮流をとらえる。流木や漁網などの漂流物に当たっても壊れたり、巻き付いたりしにくい構造。実証試験用の長さ7メートル、プロペラの直径3メートルのタイプで出力10キロワットになる。神戸市のベンチャー企業ノヴァエネルギーが開発した。

 同社は2010年度に環境省の委託事業として技術開発を進めたが、資金難で事業化できなかった。同社の鈴木清美社長(61)を今年2月に備後地方の経営者たちが講師に招き、潮流発電の可能性を感じて本格的にタッグを組んだ。

 潮流発電は、潮の満ち引きで生じる潮流を利用。昼間しか発電できない太陽光や風任せの風力に比べ、秒速1・5~2メートルの潮流があれば発電できるため、安定供給が可能だ。島が多い瀬戸内海には潮流が速い海域があり事業化に向いているという。

 協同組合は、金属加工や機械設計などの得意分野を生かし、本体やプロペラ、増速機などを製造する。将来的には、水深150メートル程度の海域に長さ25メートル、直径17~18メートル、出力500キロワットの大型発電装置をこいのぼりのように縦に連ね、一定規模の発電所として稼働させる考えだ。

 発起人の一人、日プレの福田延弘社長(75)は「備後地方には幅広い製造業があり何でも造れる。中小企業の力を結集し、この地域を再生可能エネルギー創出エリアにしたい」と話している。

(2014年6月8日朝刊掲載)

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