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原爆症「原因確率」廃止へ 新基準 与党が了承 厚労省見直し案 迅速・積極的に認定

■記者 道面雅量

 原爆症認定基準の見直しを進めている厚生労働省は17日、新基準の原案を自民、公明両党の原爆被爆者対策に関する与党プロジェクトチーム(PT)に示し、了承を得た。原爆症認定集団訴訟の原告らから批判されてきた「原因確率」による審査を「全面的に改める」と明記するなど、与党PTが昨年末にまとめた案に沿った内容。年度内に詳しい基準を固め、新年度から審査で使う。

 与党PTの河村建夫座長(自民、山口3区)は「原因確率の考えを改めたのは大きい。集団訴訟の解決へ進むことになる」と評価。日本被団協の田中煕巳事務局長も「与党PT案を大筋で採用したことを評価する」とし、新基準が原告を広く救えるかを見極めつつ訴訟の早期解決に力を尽くす考えを示した。

 「新しい審査のイメージ」と題した原案は、被爆者の高齢化や、放射線の影響が個人ごとに異なるのを考慮し、「原因確率による審査を全面的に改め、迅速かつ積極的に認定を行う」とした。

 爆心から約3.5キロ以内で被爆するか、爆心地(爆心から約2キロまで)に100時間以内に入ったり、1週間程度滞在したりした被爆者は、がん、白血病、副甲状腺機能高進症、放射線による白内障、心筋梗塞(こうそく)の5種類の病気になった場合、「格段の反対すべき事由がなければ積極的に」認定。与党PTの主張してきた「自動認定」とほぼ同じ立場をとっている。

 また、この基準に当てはまらない場合も「個別審査の上、総合的判断を加えて」判定するとした。これで集団訴訟で慢性肝炎の悪化に被爆の影響が認められて勝訴した原告らを救済する可能性も開かれる。原爆症認定集団訴訟は現在、15地裁6高裁で争われ、原告は約300人。

 原爆症認定制度をめぐっては、昨年12月、厚労省の検討会と与党PTがそれぞれ見直し案をまとめた。日本被団協は、検討会案を「原因確率を温存している」と批判、与党PT案を高く評価していた。

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