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上関埋め立て 黒塗り開示 知る権利「尊重を」 専門家指摘相次ぐ

 中国電力の上関原発建設予定地(山口県上関町)の公有水面埋め立て免許の延長申請に関する情報公開請求で、山口県が中電に求めた5度目の補足説明に対する回答内容を全て黒塗りにして開示した対応に、専門家から「県民の知る権利を尊重する姿勢が足りない」との指摘が相次いでいる。(門戸隆彦)

 中国新聞は県に中電から5度目の補足説明の回答が届いた4月14日、県に情報公開請求をした。県は中電の意見を踏まえて5月12日付で、添付書類30枚を含む全37枚の回答部分の非開示を決定。書面は26日に交付され、中電の回答部分は全部黒塗りにされていた。

 全て非開示とした理由を、県は「法人情報であり、開示すると中電に不利益を与える恐れがある」「県や国の意思形成に著しい支障が生じる恐れがある」と説明。情報公開条例は命や健康に関わる情報は法人情報でも公開を求めているが、県は「確実に事故が起きるわけではないし、危険が差し迫った状況にもない」とする。

 だが山口大経済学部の立山紘毅教授(憲法学)は福島第1原発事故を挙げ、審査内容は開示すべき情報に当たるとの見解を示す。県は過去4度の回答内容も一貫して黒塗りにしてきた。中電に補足説明を繰り返し、延長の可否判断を先送りしていると批判が強まる中、「県民に隠しごとをしているとの疑念を招く。部分的にでも開示するべきだ」とする。

 同じく情報公開に詳しい専修大文学部の山田健太教授(言論法)も「形式的な理由で意思決定過程が長期間、県民の目に届かない事態は自治体のありようとして好ましくない。『公的な情報は住民のもの』という情報公開制度の理解が不足している」と語る。

 村岡嗣政知事はこうした指摘に対し、10日の記者会見で「過去の記者会見で、中電の了解を得て一部を公表した。説明責任を果たすための工夫はしている」と反論した。

 中国新聞は4日、非開示決定を不服として同条例に基づき異議を申し立てた。県は大学教授や弁護士たちで構成する県情報公開審査会の意見を聞いた上であらためて判断する。

上関原発建設計画の埋め立て免許
 山口県上関町長島の海上約14万平方メートルが埋め立て対象で、県は2008年、中国電力に免許を交付した。工事は福島第1原発事故の影響などでほとんど進まず、12年10月に期限切れを迎えた。免許延長を申請した中電に、県は工事を完了できなかった理由などを繰り返し照会。昨年3月には故山本繁太郎前知事が延長の可否判断を1年程度先送りすると表明し、5度目の補足説明を求めた。中電は期限のことし4月11日で回答したが、県は「可否を判断できる十分な情報がない」と6度目の補足説明を求めた。回答期限は1年後の5月15日。

(2014年6月12日朝刊掲載)

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