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連載・特集

緑地帯 広島「女縁」の現在 高雄きくえ <1>

 これまでの人間関係が「地縁・血縁・社縁(会社を基礎とする社会的なつながり)」だとしたら、地縁や血縁に縛られ、社縁に入れてもらえなかった女たちは、ウーマン・リブ以降「女とつながる」ことを草の根的に試行してきた。そのつながりを、社会学者上野千鶴子さんは「女縁」と名付けた。

 広島でも「女縁」は息づいている。私自身1985年、女性3人で「家族社」を設立した。「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業の矛盾が噴き出し、「家族崩壊」と叫ばれた時代。「揺れ動く家族を女の視点で読み解こう」とミニコミ紙「月刊家族」の発行を19年続けた。結婚、仕事、子育て、介護…。家族をめぐる問題は尽きることなく、生きることと重なりながら常に私の前にあった。

 その後は「ひろしま女性学研究所」と名を変え、ジェンダーを主題に出版社を営んでいる。地方で活動できるのは、問題意識を共有し、社会化しようとした女たちとの出会いがあったからだ。フェミニズム、ジェンダー論、男女共同参画など呼び名は変わっても、底流に「女縁」があり、公的な動きとは違う流れをつくってきた。

 私たちが東日本大震災と福島第1原発事故を経験した意味を被爆地広島でも考えようと、「被爆70周年ジェンダーフォーラムin広島」(仮称)を企画し、今年1月から準備会を始めた。年齢・職業・国籍の異なる女たちが毎回15人ほど集まり、議論する。これこそ「女縁」のチカラなのだと思う。(たかお・きくえ ひろしま女性学研究所代表=広島市)

(2014年6月3日朝刊掲載)

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