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奥出雲に防災NPO 島根原発事故なら松江市民3800人受け入れ 住民主導の備え目指す

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故の際、松江市民約3800人を受け入れる奥出雲町で、町民有志が防災活動に取り組むNPO法人を設立し、活動を本格化させている。被害が広域に及んだ福島第1原発事故を受け「住民主導でこそ充実させられる原発事故への備えがある」と意気込む。(樋口浩二)

 県NPO活動推進室によると、県内のNPO法人267団体(2013年末)のうち、12年度に防災を手掛けたのは1団体。防災がメーン事業の団体は「聞いたことがない」という。

 法人名は「奥出雲BGFやっちゃら会」。BGFは事業の柱とする防災・減災・復興の頭文字、「やっちゃら」は「さあやろう」の意の方言にちなむ。同町三成で印刷店を営む理事長の清水俊行さん(60)や、地元農家たち役員6人で13年10月に発足させた。

 共通するのは「行政頼みでは被災者は守れない」との思い。避難所の運営など災害救援では、普段の近所付き合いで築いた人脈や土地勘が大きな助けになると考えるからだ。

 原発から30~50キロ圏に位置する人口約1万4千人の同町は12年11月に正式に避難先となった。だが「受け入れ地区という事実さえ知らない人も多い」(清水さん)。ことし5月には町と中電から担当者を招き、被災者の受け入れ計画と島根原発で進む安全工事を学ぶ講演会を開いた。秋には、福島の事故で県内へ避難した人に思いを語ってもらう会を催す。

 避難所生活で重要な避難食作りにも取り組む。1月には、アレルギーの有無にかかわらず食べられるカレーの試食会を町役場で開いた。13年11月に県などが実施した島根原発の避難訓練では、避難元の松江市島根町の住民約120人に地産野菜を使った豚汁を振る舞った。住民同士の交流も今後深める計画だ。

 活動を支えるのは会員の年会費3千円。「原発のリスクと向き合い当事者意識を持ちたい」=奥出雲町議の内田雅人さん(48)=などと、これまでに町内外の5人が加わった。入会は清水さんTel090(9413)3191。

(2014年6月16日朝刊掲載)

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