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母との絆 旋律に乗せて 原爆小頭症・川下さんの詩が歌に 交流の智さん作曲「シンプルでピュア」

 原爆小頭症患者の川下ヒロエさん(68)=広島市東区=が書いた詩に、地元のシンガー・ソングライター智(とも)さん(安佐北区)が曲を付けて歌にした。3月に92歳で亡くなった母兼子さんが、入院して離れ離れになった昨年夏にしたためた「母子草」。8月に市内である音楽イベントで披露する。

 2人は患者と家族、支援者でつくる「きのこ会」の長岡義夫会長(65)=安佐南区=の自宅に集い、1番を智さんのピアノ伴奏で一緒に歌った。近く3番まで仕上げる予定だ。

 「母こぐさの花が咲きはじめた やさしい 母の思い出が目にうかぶのよ げんきでいてね」。けなげに咲く草花に、募る母への思いを重ねた詩。柔らかで耳になじむ旋律に乗せた。川下さんは「良い曲で本当にうれしい。でもお母さんのことを思い出してしまう」と目頭を押さえた。

 2人の出会いは、5月にあったきのこ会の総会。障害者との交流などの活動に力を入れる智さんが招かれて歌った際、手帳8冊分の詩集を川下さんから見せられた。「シンプルな言い回しの中に、ピュアな人となりが伝わる。その言葉の輝きをもっと引き出したいと思った」という。母子で重ねた苦労と絆がにじむ一編を選んだ。

 川下さんは以前から、兼子さんとともに眺めた四季の移り変わりを小まめに書き留めてきた。最新作は「平和」。総会の時に智さんから贈られたヒマワリの種を自宅で植え、無事発芽したことから着想を得た。「せんそうのない へいわなせかいがほしい ひまわりの花を咲かせよう」。智さんは、この詩にも曲を付けることを約束した。

 原爆小頭症の患者は昨年3月末現在、全国で20人。兼子さんが亡くなり、きのこ会が把握する患者の親はいなくなった。川下さんも現在は1人暮らし。患者たちの高齢化が進み、国による支援の強化が大きな課題となっている。(金崎由美)

(2014年6月16日朝刊掲載)

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