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アンネの願い 次世代へ 生誕85周年 福山でイベント

 アンネ・フランク(1929~45年)の平和への思いを継承しようと、福山市の市民有志たちが毎年、アンネの誕生日(6月12日)を前に、平和イベント「アンネと出会おう」を同市御幸町のホロコースト記念館で開いている。生誕85周年を迎えた今年は、紙芝居や歌を披露し、平和の尊さを子どもたちに語り掛けた。

 7日にあったイベントには約50人が参加した。ナチスによる迫害で隠れ家生活を続け、15歳で生涯を終えたアンネの一生や、大虐殺(ホロコースト)の歴史を描いた手作り紙芝居を上演し、「アンネの日記」の読み語りをした。同市の南小4年金尾一穂君(10)は「アンネの苦しい生活がよく分かった」と話した。

 イベントは福山、三原市の主婦や会社員たち約10人が2008年に設立した「マロニエの会」が企画。「神様が長生きさせてくださるなら、世界と人類のために働きます」と日記に書いたアンネの思いを引き継ごうと、翌09年に始めた。

 この日は、福山市立大教育学部で保育を学ぶ学生15人も参加。平和やアンネをテーマにした歌3曲を披露し、ナチスによるユダヤ人迫害の歴史を踏まえ、「違いを認め合おう」と手話を交えて訴えた。

 東京の図書館などで「アンネの日記」や関連の書籍が大量に破られる事件が2月に表面化。日本の右傾化が進んでいると海外のメディアなどから指摘された。

 同会の中尾加寿子さん(53)=福山市=は「日記は有名だが、実際に読んだ人は少ない。この機会にアンネの思いを知ってほしい」。市立大2年青木梨穂さん(19)は「子どもたちに平和の大切さを伝えられる保育士になりたい」と願う。

 吉田明生副館長(45)は「本が破られる悲しい事件があったが、アンネの平和への思いは世界の人に感銘を与えている。子どもたちに伝えていきたい」と話している。(小林可奈)

アンネ・フランク
 ドイツ・フランクフルトで生まれたユダヤ人の少女。ナチスの迫害を逃れ、13歳から2年間、オランダ・アムステルダムの隠れ家で暮らした。15歳でナチスに捕らえられるまでの約2年間を日記につづった。1945年3月に強制収容所で亡くなった。

(2014年6月16日朝刊掲載)

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