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被爆65年 世代超え 深く継承 8・6ドキュメント

■記者 松本大典、山崎雄一、柳本真宏、重田広志

 国連事務総長や原爆投下国の米国の代表が初めて広島市が営む平和記念式典に参列した広島原爆の日。市内では「あの日」の惨禍で亡くなった人たちを悼み、平和な世界や核兵器廃絶を目指すさまざまなイベントが開かれた。過去から未来へ。それぞれが65年の節目の夏に、誓いを新たにした。

  0:00 「涙がこぼれる。母国トリニダード・トバゴの両親や友人に被爆者の味わった苦しみや核兵器の恐ろしさを伝えたい」。長崎県佐世保市の英語教師スアン・サイモンさん(27)は原爆ドームの周りで撮影を続けた。

  0:25 「被爆した父は1987年8月6日に他界した。翌年、初めてここに来た時は特別な空気を感じて鳥肌が立った」。広島市西区の主婦藤本節子さん(54)は、慰霊碑前で手を合わせる。

  2:30 「広島と縁を感じる。僕が伝えなければ」。川崎市の公務員渡辺英樹さん(32)は8月6日が誕生日。「広島でしか得られない真実を肌で感じたい」と瞳を閉じた。

  3:45 「原爆ドームから、核兵器を使うなとのメッセージが伝わってくる」。米フロリダ州から観光で訪れた米陸軍兵フィリップ・キャッチエトーリさん(39)は元安橋から原爆ドームを見つめ、つぶやいた。

  6:05 「原爆について知るきっかけを沿道にまいていきたい」。障害者レスラーの永野明さん(35)=東京=が昨年に続き、ハンドサイクル(手こぎ自転車)で原爆ドームから長崎を目指す「ピースラン」の旅に出発した。

  6:40 「8月6日の平和記念公園は胸が締め付けられる思いがする」。佐伯区の被爆者森岡ハツエさん(84)は20年ぶりに式典に参列。「年も取った。これが最後かね」

  7:10 「海外の人、車いすの人、目が不自由な人、同い年の子…。いろんな人が来た。みんなで原爆をなくそう」。カブスカウトに所属する牛田新町小4年酒井光輝君(9)は元安橋で式典パンフレットを配った。

  7:25 「やさしいひいおばあちゃんに届くように歌いたい」。ひろしま平和の歌の合唱に加わる青崎小4年天羽和香子さん(9)は母と姉と一緒にひな壇にスタンバイ。曾祖母は4月に93歳で亡くなり、原爆死没者名簿に新たに加わった。

  7:32 米国のルース大使が平和記念公園に到着。

  8:00 平和記念式典が始まる。

  8:15 「平和の象徴だけど、私には優しい姉のお墓」。安佐南区の木村英雄さん(75)はあの日、姉を失った原爆ドームに向かい黙とう。電話交換の仕事をしていた姉の遺骨は見つかっていない。

  9:49 菅直人首相が被爆者代表から要望を聞く会に出席。

 10:10 「音楽でみなさんと平和への思いを共有したい」。安佐北区のビオラ奏者沖田孝司さん(52)が広島国際会議場の国際交流ラウンジで演奏。

 11:20 「選ばれたからにはきちんと伝えなきゃいけない」。千葉市原爆被爆者の会から公募で派遣された「親子記者」の島田由加里さん(51)、安莉(あんり)さん(15)母子が原爆資料館へ。式典や潘基文(バンキムン)国連事務総長の講演を聞き、「ここに来ないと分からないこともたくさんあった」。

 12:35 「命の連鎖、平和の連鎖を次世代につなげます」。被爆アオギリ前で「3世」の苗木を受け取った福岡県小郡市の平和ボランティア石川由美子さん(59)が宣言。

 13:20 「時代を超えた語り手として次世代への橋渡しをしてくれる」。中区の本川小に被爆ピアノの音色が響いた。企画した国連平和デー被爆ピアノ平和コンサート実行委の梶田誠委員長(50)=神戸市=はコンサートの意義を強調。

 14:15 潘国連事務総長が舟入高で生徒と交流。

 16:30 「戦争や原爆について知らなすぎた。もっと学ばないと」。原爆供養塔そばでドイツ人約10人と議論を交わす大学生横山菜緒美さん(21)=松山市。自信を持って伝えられないことにもどかしさを募らせた。

 19:00 元航空幕僚長の田母神俊雄氏が中区で今年も講演。

 19:20 「孫と一緒に今年もとうろうを流せることは幸せ」。5歳で被爆した安芸区の君永博さん(70)は、当時と同じ5歳の孫と一緒にとうろうを元安川にそっと浮かべた。「この孫たちが元気で大きくなるには戦争なんかはあってはいけない」

(2010年8月7日朝刊掲載) 【写真説明】 【写真説明】

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