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社説・コラム

『潮流』 平和科研と平和研

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長・宮崎智三

 身近すぎて、かえってその価値に気付きにくくなることがよくある。広島市内にある平和研究機関にも当てはまりそうだ。広島大平和科学研究センター(平和科研)と、広島市立大広島平和研究所(平和研)である。

 平和を探求する専門機関を持つ大学は、首都圏に集中している。地方では数少ないのに、二つもあるのは被爆地ならではのことだろう。

 平和科研には「国内初」という冠がある。平和学の学術的研究機関としては全国に先駆けて1975年に発足し、国立大では依然として唯一の存在だという。一方、98年設立の平和研は歴史は「先輩」の半分以下だが、専任教員は12人と大きく上回る。それぞれの専門分野も幅広い。

 ただ近年は、トップの不在などで、どちらも存在感が薄らいでいた。学長や副学長らが充て職で兼務。後継者探しの難航などの事情はあろう。しかしトップ不在が外部からどう見られていたか、容易に想像できる。存在意義は何か。そもそも大学は後押しする気があるのか…。

 そうした疑問は、どれほど吹き飛ばせただろうか。平和研は昨年春、2年ぶりに所長不在を解消した。平和科研は今春、専任教員が1人から過去最多の5人に増えた。非常勤とはいえ、専任のセンター長も就任した。態勢が整ったからなおさら、両組織の「出番」を増やしたいところだ。

 その理由は来年が被爆70年というだけではない。広島・長崎の悲惨な体験も土台となった憲法の平和主義が今、根底から揺さぶられているからである。

 核兵器や戦争の悲惨さから何を学び、どんなメッセージを発するか―。被爆地にある限り、政策決定者や、それに近い研究者とは異なる視点が求められる。1足す1が2ではなく、3や4になるように相互連携や広島全体でのサポートが必要だろう。

(2014年6月19日朝刊掲載)

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