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101歳 決意の初証言 広島の小田さん つどいに参加

■記者 野田華奈子

 原爆で夫と長男を亡くし、今年で101歳となった広島市東区の小田松枝さんが6日、初めて被爆体験を証言した。65年たってなお鮮烈な「あの日」の記憶。「生きているうちに伝えたい」と決意した。

 小田さんは同市中区であった「証言のつどい」に参加。県内外から15人が聞き入った。

 「生後4カ月の娘が布団ごと飛ばされ、天井が裂けた」。4人の子どもがいた小田さんは、牛田町(東区)の自宅で被爆した。広島逓信局に勤めていた夫=当時(43)=は、鉄砲屋町(現在の中区袋町など)にあった旅館で被爆死したとされる。

 「旅館の跡を掘り続け、最後に夫の財布の金具や鍵が出てきた。もう涙も出なかった」。動員先の工場で被爆した長男=当時(14)=は、1年後に白血病で亡くなった。

 郵便局に勤め、過去を振り返る余裕もなく、懸命に3人の子どもを育てた。「たくさん被爆者がおられる中で、自分の体験はたいしたことはない」と、これまで自ら証言することはなかった。

 今回、被爆体験を知る知人を通じ、公の場での証言の依頼を受けた。「いつ死ぬかわからない。何か役に立つことができれば」。そんな思いに駆られ、引き受けた。

 孫とひ孫が合わせて10人いる。「いろんな方のおかげで今日がある。人の知恵は助け合うことに使ったらいい」。核兵器のない未来を心底願う。

(2010年8月7日朝刊掲載)

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