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社説・コラム

社説 通常国会閉幕へ 与党の強引さ 際立った

 ことし1月に召集された通常国会が事実上、閉幕した。終始、安倍政権と巨大与党の自民党のペースで進んだ。その政治姿勢には強引さが際立ったと言わざるを得ない。

 安倍晋三首相は今国会を経済の「好循環実現国会」にすると強調していたはずだ。当初予算の成立後は「安全保障国会」に変質したように思える。

 後半国会の焦点は、提出された議案より、もっぱら集団的自衛権の行使容認をめぐる動きだった。安倍政権は、行使を禁じてきた憲法解釈を変更する閣議決定を目指している。

 自民党は先月から、連立相手の公明党との与党協議を続ける。ここにきて目立つのは、力ずくで事を進めようとする姿勢だ。安倍首相の意向を受けてのことと思われる。

 例えば、自民党はきのうの与党協議で、国連の集団安全保障に基づく武力行使に自衛隊が参加できるよう検討すべきだと提起した。中東のシーレーン(海上交通路)での機雷掃海活動を念頭に置いている。

 しかし安倍首相自ら記者会見や国会答弁で「自衛隊が武力行使を目的として、湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは決してない」と、国連の集団安全保障による武力行使への参加には否定的な見解を示してきた。公明党が反発するのも当然だろう。

 憲法解釈を変更する閣議決定の時期について、安倍首相は今国会中は見送ったものの、外遊前の来月上旬を目指しているとされる。国の安全保障の形を変えるだけに、期限ありきの議論は許されない。

 安倍政権の姿勢は、肝心の法案審議にも表れていよう。政府が新規に提出した法案の成立率は97%に上る。「決められる政治」といえるのかもしれないが、拙速の感は否めない。

 きのうも、特定秘密保護法の運用をチェックする「情報監視審査会」を衆参両院に新設する国会法の改正案を参院本会議で可決し、成立させた。

 ただ情報監視審査会に政府への強制力はなく、どれだけ実効性があるのか、疑問視されている。そのため野党各党が慎重な審議を求めたが、与党側が採決に踏み切った形だ。

 改正案は衆院を通過した後、参院で19日に審議入りしたばかりだった。これでは結論ありきと言われても仕方あるまい。

 ほかにも成立前に審議が尽くされたのか疑わしい法案も少なくない。介護保険や医療の提供体制を見直す地域医療・介護総合確保推進法もそうだろう。介護保険の存続が目的だとしても、地域格差や質の低下についての議論は十分とはいえない。

 政府・与党は次々と重要法案を成立させたにもかかわらず、国会議員自らが「身を切る」定数削減や選挙制度改革はまたも先送りした。

 会期末になり、衆院は選挙制度改革を検討する第三者機関の設置をようやく決めた。参院も制度改革の議論が停滞している。与党の責任は重く、このままではとても国民の理解は得られない。

 今国会で議論が深まらなかったのは、野党にも責任があろう。しっかりと対立軸を国民に示すべきだ。野党が役割を果たせなければ、国会そのものの意義が問われよう。

(2014年6月21日朝刊掲載)

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