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『この人』 「INORI~祈り~」が反響を呼ぶ歌手 クミコさん

■記者 治徳貴子

 広島原爆の日、白血病のために12歳で亡くなった佐々木禎子さんの心情を織り込んだ「INORI~祈り~」を禎子さんの母校・幟町小(広島市中区)で歌った。作詞作曲は禎子さんのおい祐滋さん(40)。♪二度と二度とつらい思いは 誰にもしてほしくはない―。最初は悲しみを込め、徐々に力強く。きゃしゃな体から声を振り絞った。

 「近づく死への恐れと、生きたいという祈り、『悲劇を繰り返さないで』という思い。そんな禎子ちゃんの願いを歌を通して伝えていく。その覚悟が深まった」と話す。

 水戸市出身。早稲田大を卒業後、1982年に若手シャンソン歌手の登竜門・銀座の「銀巴里」のオーディションに合格し、プロに。その傍ら「はかない命を大切にしたい」と反戦歌を歌ってきた。歌声を聞いた祐滋さんから「『INORI』を歌ってほしい」と昨年、依頼された。

 「まず断ろうと思った。被爆地の出身でもなく、禎子ちゃんのことも知らない。私には資格がない」。でも、祐滋さんに「被爆地とは違う場所の第三者に歌ってもらいたい。その方が世界に訴える気がする」と強く勧められた。

 2月にCDを発売。反響は大きかった。コンサートで歌うと客席で泣く人たちがいた。「禎子ちゃんの『生きたい』という叫びを『生きて』というメッセージと受け止めてくれるからでは」。有線放送ランキングで3回1位を記録。平和をテーマとした歌としては異例の大ヒットとなった。

 この歌を海外にも広めたいと願う。「『INORI』という言葉が『平和』を意味する世界共通語になるまで」。東京都在住。

(2010年8月8日朝刊掲載)

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