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『この人』 ネバーアゲインキャンペーン第10期大使 森川高明さん

■記者 新田葉子

 「国や国連が核兵器廃絶に取り組むようになる原動力は市民の声。組織化して訴えていかなければ」。草の根の市民活動「ネバーアゲインキャンペーン(NAC)」のボランティア大使として来春渡米。原爆投下国でホームステイしながら被爆体験を伝え、核兵器廃絶を呼び掛ける。

 6日から4日間、広島、長崎両市である事前合宿に参加している。大使は6人。若者に交じって被爆者や研究者に話を聞き、被爆関連施設を見学する。

 原爆投下当時は広島県佐伯郡河内村(現広島市佐伯区)におり、黒い雨を浴びた。NHK職員だった父(1974年に63歳で死去)は、被爆後、広島壊滅の一報を伝えようと奔走した。自らや父の「あの日」を証言しようと意欲を燃やす。

 自動車メーカーで定年までエンジニアとして働いた。海外生活も長い。フィリピンでは旧日本軍の「蛮行」を聞き、ニュージーランドでは旧日本兵の遺品を託された。行く先々で「戦争」に触れた。

 退職後、国際交流ボランティアの傍ら、黒い雨について勉強を始めた。条件に該当すると分かり、昨年健康診断受診者証を取得した。当時雨に遭ったのは、川を挟んで健康診断特例区域が分かれる地域。ぎりぎりのところで対象になったことが逆に伝えなければいけないという思いにつながった。

 「これまで人に話そうと思っていなかったが、いつまでも時間があるわけではない。これは市民ができる平和構築の一つ」と自らを鼓舞する。

 西区で妻と暮らす。

(2010年8月7日朝刊掲載)

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