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社説・コラム

『潮流』 黒塗りだらけの「開示」

■山口支局長・吉村時彦

 原子力発電所の建設計画は、透明性がまずは最低限の条件になる。

 当たり前の話だ。3年前に起きた福島第1原発事故を誰も忘れてはいない。

 今なお故郷に帰れない被災地の人たちの心情を考えても、将来に向けて国民の安全を守るためにも、原発再稼働には、より慎重な検討と、情報開示に基づく国民のコンセンサスづくりが欠かせない。

 原発を推進する立場の人たちも安全性を無視して計画を進めろ、などと言ってはいない。むしろ徹底的な安全対策を求め、それを確保した上で進めるよう望んでいる。にもかかわらず、中国電力が計画する上関原発の公有水面埋め立て免許延長問題での山口県の対応は物足りない。

 中電に対し、5回もの照会を繰り返す一方で、照会内容はほとんど明らかにしていない。本紙が文書開示を求めても黒塗りだらけだ。

 「政策判断の過程は明らかにできない」「企業に不利益が生じるため」というのが理由だそうだが、延長の可否判断はまた1年延びた。およそ住民に分かりやすい構図とは言い難い。

 村岡嗣政氏が当選した2月の山口県知事選は、上関原発だけが争点ではなかった。官僚出身者としての力量や安定感に期待し、原発賛成、反対双方の県民が票を投じたはずだ。

 こうした事情を意識してか、村岡知事は、本紙の取材に「交渉過程での公開には難しい面もある。だが一定の結論を出した時点ではある程度の開示はできると思う」と述べた。

 全国でも2番目に若い知事ながら、議会答弁や報道対応には安定感があるといえよう。原発問題への対応は「安全運転」が欠かせないし、簡単に〇×で判断できない難問かもしれないが、山口県は中電の筆頭株主でもある。もっと踏み込んだメッセージを求めたい。

(2014年6月24日朝刊掲載)

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