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潘国連総長 「私たちも最善を尽くす。平和のトーチ引き継いで」

■記者 金崎由美、田中美千子、新本恭子

 潘氏は6日午後、中区の舟入高を訪れ、国際コミュニケーションコースの生徒115人と対面した。「君たちは未来のリーダー。私たちも最善を尽くすから、平和のトーチを引き継いでほしい」と英語で訴えた。

 同校が開いた平和交流会。ジョークを交えながら、質問にも気さくに応じた。核兵器廃絶の実現性を質問した生徒には「夢物語という人もいるが、目標がないと何も生まれない。本気で取り組めば、達成できない目標などない」と断言。3年脇谷あゆみさん(18)は「広島はさらに行動すべきだと課題をもらった。今日をスタートラインにする」と誓った。

 潘氏は平和記念式典後、原爆資料館で、高橋昭博元館長(79)の被爆証言にも耳を傾けた。「核兵器廃絶は緊急課題。世界のリーダーに必要性を訴える」。聞き終えると、そう繰り返したという。「真剣な表情から熱意が伝わった」と高橋さんは満足そう。

 また平和記念公園の韓国人原爆犠牲者慰霊碑にも参拝した。在日本大韓民国民団(民団)広島県地方本部の姜文熙(カンムニ)・韓国原爆被害者対策特別委員長(91)は「夢のよう。この人が核兵器廃絶を実現するのを見届けたい」と願いを託した。


ジュニア記者、単独取材


■記者 二井理江

 中国新聞の定期連載「ひろしま国 10代がつくる平和新聞」のジュニアライターが6日、国連の潘基文事務総長に単独インタビューした。潘氏は核廃絶への強い思いを語り「多くの人が助けを求めている。皆さん若い世代に、国境を超えて『世界市民』になってほしい」と語りかけた。

 広島市中区の広島国際会議場で中高校生4人が取材。「核兵器廃絶への強い思いの理由は」の質問には、「生まれ育った韓国では北朝鮮との戦争があり、核の脅威があるから」と答えた。潘氏にとっての「平和」を紙に表現してほしいとの依頼にも快く応じ、国連カラーの水色で「核兵器のない世界実現」と日本語で記した。

 広島城北高3年の見越正礼(みこし・まさひろ)君(17)は「質問にきちんと答えてくれた」と取材に手応えを感じていた。

(2010年8月7日朝刊掲載)


『記者手帳』 潘事務総長 にじむ人柄


  ■ヒロシマ平和メディアセンター 二井理江

 取材場所に笑顔で姿を見せると、待ち構えた中高生4人のもとに歩み寄り、自ら手を差し出した。「何でも聞いてください」。国連の潘基文事務総長である。にじみ出る人柄に、子どもたちのほおが緩んだ。

 6日、広島市の平和記念式典に参列した後の潘事務総長に、中国新聞の定期連載「ひろしま国 10代がつくる平和新聞」のジュニアライターが単独インタビューした。「こんにちは」「初めまして」など韓国語であいさつすると、さらに場が和やかになった。

 潘事務総長は質問に丁寧に応じ、「平和」について表現してほしいとのジュニアライターからの依頼も快諾した。国連カラーの水色のペンを選び、厚紙に日本語で「核兵器のない世界実現」。どうやら前夜に練習してくれていたようだ。

 多忙を極めた広島滞在の合間。申し込んだ当初は「無理だろう」とも考えた。それでも、過去の掲載記事や、活動をまとめた書籍「ひろしま国」を送り、何度も英語や日本語でメールするなどアプローチし続けた。

 「いい雰囲気でしたね」と国連広報センターの担当者が声をかけてくれた。そして「頭が真っ白だった」と苦笑しながらも、子どもたちの達成感に満ちた表情が何より印象的だった。

(2010年8月30日朝刊掲載)

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