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大虐殺 生き延びた祖母 福山ホロコースト記念館で講演 米在住の孫2人「悲劇 覚えていて」

 ナチスによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)を生き延びた女性の孫2人が、福山市御幸町のホロコースト記念館で子どもたち約80人に祖母の体験を語った。米国に住むゴニ・ドゥブノブさん(20)、タムーズさん(19)の姉弟。生後約半年で両親を殺され、ポーランド人として育てられた祖母ハリーナさん(75)の数奇な運命を、静かに語り継いだ。(小林可奈)

 赤ん坊だったハリーナさんはユダヤ人の親類に預けられた。親類が、ポーランド人女性に全財産を渡し「ナチスが来たら赤ん坊にアルコールを飲ませて眠らせ、壁の穴に隠す。窓に赤いカーテンがかかっていたら赤ん坊を助けて育てて」と頼んでいたおかげで助かったという。ポーランド人として育ったハリーナさんが、自身の体験を語り始めたのは60歳のころだった。

 姉弟2人は家族で日本を旅行中、福山市にホロコースト記念館があるのを知って講演を申し出て、21日に訪れた。「祖母の体験について話すのはつらいが、若者に伝えるのは大切。悲劇を繰り返さないため覚えておいてほしい」と語った。

学んだ成果 同世代に発信 福山ホロコースト記念館を拠点 小中高生グループ

 福山市や近郊の小中高生のグループ「スモール・ハンズ(小さな手)」が同市御幸町のホロコースト記念館を拠点に、平和やホロコーストについて学び伝える活動を続けている。ゴニ・ドゥブノブさん、タムーズさん姉弟とも交流した。

 グループは1997年から活動し、会員は現在約20人。アンネ・フランク(1929~45年)の父オットーから京都市の教会に贈られたバラを接ぎ木して育てた苗を「アンネのバラ」として全国の学校などに送る活動をしている。アンネや、ユダヤ人を救った外交官杉原千畝(1900~86年)を紹介する新聞も作った。

 会員は来年3月に米国を訪ね、ユダヤ系の学校や博物館を巡ってホロコーストの歴史をさらに学ぶ計画。21日はドゥブノブ姉弟の話に静かに耳を傾け、意見を交わした。

 広島大付属福山高1年吉田さやかさん(15)は「同年代でホロコーストに関心を持っている人は少ない。今後も自発的に学び、伝えていきたい」と話す。(小林可奈)

(2014年6月24日朝刊掲載)

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