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社説・コラム

『備後語録』 元首相・村山富市さん 

元首相 村山富市さん(90)=大分市

「談話」の継承 世界に約束

 「首相就任は自らの意思ではなく、運命に背中を押されたような気がする」。尾道市内で「回想・内閣総理大臣」と題して講演し、当時を振り返った。

 1994年6月、自民、社会、新党さきがけ3党の支持により第81代首相に就任した。大臣経験もないまま、いつの間にか首相になったが思いは一つだった。「やるからにはこの内閣でしかできないことをしたい」。翌95年はくしくも戦後50年の節目の年。戦争に対する反省を踏まえて8月15日、植民地支配と侵略を認めた村山談話を発表した。

 今、安倍晋三首相が就任し、談話の見直しを示唆したり靖国神社を参拝したりすることを憂う。「村山談話は閣議決定し、後継の首相も継承すると世界に約束している」。安倍首相には、大局に目を向け、日本の将来を考えて行動すべきだと注文する。

 95年1月に発生した阪神大震災では、初動対応と情報収集の遅れから批判を浴びた。弁解の余地はなく、今でもざんきに堪えない。一方で「復興に向け、国民みんなが力を合わせた。ボランティア精神も根付いた」とも思う。

 憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は、立憲主義に反すると強調。時の権力者が都合のいいように解釈を変えることにつながり、許されないと警鐘を鳴らす。

 日本の政治をよくするも悪くするも、国民の認識にかかっている、と訴える。「有権者の声に反することをする議員は当選させない。そのぐらいの気持ちで1票を投じてもらいたい」(鈴木大介)

むらやま・とみいち
 明治大卒。大分市議、大分県議を経て、1972年に衆院議員初当選。93年に社会党委員長、94年6月から96年1月まで自社さ連立政権で首相を務めた。2000年に政界を引退した。

(2014年6月24日朝刊掲載)

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