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原水爆禁止世界大会 総括 「核の傘」離脱 議論熱く

■記者 岡田浩平

 9日に閉じた原水禁国民会議などと日本原水協などの二つの原水爆禁止世界大会はいずれも、核兵器廃絶への確かな道程を描く議論に熱が入った。ともに米国の「核の傘」からの離脱を政府に迫る運動の強化が当面の課題となる。

 5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、「核兵器のない世界」の達成こそ各国共通の政策目標であることを確認した。この点で今夏の世界大会では原水禁、原水協ともに、被爆国の政府は廃絶を訴えながら「核の傘」に依存するという矛盾した政策に終止符を打つべきだ、との考えが議論の通底に流れていた。

 核の傘からの離脱をこの夏の大会基調に据えた原水禁。8日の長崎市内での分科会で軍事評論家の前田哲男氏は、軍事力を背景にした一国の安全が周辺国の軍拡を招く悪循環を指摘。「東北アジアの非核化を含む地域共通の安全保障を構築するべきだ」と説いた。

 一方の原水協も「核抑止力論の克服」を主要課題に掲げた。やはり8日の市内での国際交流フォーラムで高草木博事務局長は「核抑止力にしがみついていては核兵器廃絶は達成できない」とし、政府に「核の傘」との決別を迫った。

 こうした議論を加速したのが、ほかならぬ菅直人首相だ。6日の広島市内での記者会見で「核抑止力は必要だ」と言い切った。

 「首相発言を決して許さない」。9日の原水禁のまとめ集会で藤本泰成事務局長が訴えると会場は賛同の拍手に包まれた。原水協の大会の佐藤光雄運営委員会代表も終了後の記者会見で「世界の流れに逆行する」と強く批判した。

 両大会とも関係者は「例年になく盛り上がった」と振り返る。だからこそ、今後の運動の広がりが共通する課題と言えそうだ。

 原水禁の長崎大会で、長崎の証言の会の浜崎均さん(79)は原水爆禁止運動の再統一を呼び掛けた。分裂が続く両大会ともに参加してこなかったが、「あと何年、生きられるか。どんな機会でもいいから訴えたい」と今回は招きに応じたという。

 被爆者とともに歩んできた原水爆禁止運動が、「生きているうちに核兵器廃絶を」との被爆者の願いにどうこたえるのか。まずは被爆国政府を包囲する太い潮流づくりが問われる。


全日程が終了


■記者 岡田浩平

 原水禁国民会議などと日本原水協などの二つの原水爆禁止世界大会は9日、それぞれ長崎市内で集会を開き、今夏の日程を終えた。

 長崎県立総合体育館であった原水禁の長崎大会まとめ集会には約2200人(主催者発表)が参加。藤本泰成事務局長は、東北アジアの非核化や脱原子力などの議論で成果があったとし「廃絶の一歩になる」と総括した。

 非核三原則の法制化や被爆2世、3世への支援充実を盛り込んだ大会宣言を採択。参加者は会場から爆心地まで約1.2キロを行進して平和を訴えた。

 原水協は長崎市民会館で世界大会・長崎全体集会を開催。約2千人(主催者発表)を前に、長崎で被爆した日本被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長(78)が体験を語り「被爆者は証言を通じて核兵器の非人道性を訴えていく」と連帯を呼び掛けた。

 原爆投下時刻に全員で黙とう。核兵器禁止条約の交渉開始を柱とする長崎決議を採択し大会を締めくくった。

(2010年8月10日朝刊掲載)

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