『この人』 反核アニメの新作に意欲を燃やす作家 ジミー・ムラカミさん
10年8月11日
■記者 余村泰樹<br><br>
「ヒロシマに落とされた原爆よりはるかに威力が大きく、世界がなくなるほどの数の核兵器がある。ヒロシマの悲劇を伝えなければ」。人生最後の作品になるかもしれない長編アニメーション「百個の太陽の朝」の制作に強い意欲を燃やす。原爆が人々の日常を奪い去る現実を描こうと考えている。 <br><br>
制作を決意したきっかけは2004年、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査委員で広島市を訪れ、見学した原爆資料館(中区)。やけどした子やがれきの街…。ショックで涙があふれた。自身もいとこを長崎の原爆で亡くしている。 <br><br>
米カリフォルニア州生まれ。日米開戦後、日系人だとの理由で8~12歳は強制収容所に入れられた。姉は収容所内で亡くなった。「紙切れ1枚で人生を変えてしまう」国への不信感が芽生えた。 <br><br>
1986年には、英国を舞台にした反核アニメーション「風が吹くとき」を制作。政府の指示に従ってシェルターに逃げた老夫婦が、核爆弾によって死を迎える物語だ。 <br><br>
米国やロシアだけでなく、インドやパキスタンなども核兵器を持つ現状を危ぶみ「一握りの人間の決定で核爆弾が落とされてしまう危機に目を向けなければ」と警告。「アニメーションを通し、戦争はいけない、核兵器は無くさなければいけないと感じてほしい」と願う。 <br><br>
11日まで開催中の広島国際アニメーションフェスティバルのゲストで広島市に滞在中。10日も原爆資料館を訪れた。新作は次回のフェスティバルでの上映を目指す。アイルランドの首都ダブリンで妻と暮らす。<br><br>
(2010年8月11日朝刊掲載) <br><br>
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